研究課題
【目的】低酸素誘導因子(HIF-1α)の核移行についてはほとんど解明されていなかったが、近年、HIF-1αの核移行にはヒストン脱アセチル化酵素7(HDAC7)との複合体の形成が関与している可能性が報告された。さらに、ミルクシスルというキク科の植物の活性成分であるシリビニンに高いHIF-1αの発現抑制やHIF-1活性化の阻害効果があることも報告されてきている。そこで本研究期間では、これまでの我々の研究結果を鑑みて、HIF-1αが高率に核へ移行、活性化している卵巣明細胞腺癌をターゲットに、①HIF-1αの核移行メカニズムと活性化機構の解明、②明細胞腺癌をはじめとした上皮性卵巣癌におけるシリビニンのHIF-1ならびにHIF関連因子抑制効果の検証③シリビニンを用いた抗腫瘍効果の検討を目的に研究を展開してきた。【成績】HDAC7の発現は、明細胞腺癌で強陽性例を多く認め、HDAC7陽性例は予後不良な傾向を認めた。HDAC阻害剤VorinostatはHIF-1α、VEGFのmRNAの発現を抑制した。シリビニンによるHDAC7, HIF-1α, VEGFの発現抑制はHeLa細胞にシリビニン投与後2h、6hにおいて、シリビニン濃度依存的にHIF-1αのタンパク発現の減少が認められた。【考察】HDAC7の抑制はHIF-1αの発現抑制を通じた新たなHIF-1活性化阻害剤として有効である可能性が期待された。また、HDAC阻害剤の投与によりHDAC7, HIF-1αおよびVEGFのmRNA発現に減少を認めたが、今後、HDAC7をノックダウンしこれらの機構を解明する必要があると考えられた。シリビニンはHIF-1αタンパクの発現抑制をすることから、新たなHIF-1活性化阻害剤としての有効性が期待された。シリビニンは副作用も少ないことから、抗腫瘍の観点からも副作用の軽減された抗腫瘍薬として期待される。
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