機能性視床下部性性線機能低下はストレスと関連があることが知られている。本研究では「ストレスによるミクログリアの活性化が性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロン機能に影響を与え、黄体形成ホルモン(LH)分泌を抑制する」との仮説を立て、これを検証することを目的とした。 前年度の研究では、Lipopolysaccharide(LPS)投与による視床下部視索前野(POA)領域におけるIL-1β遺伝子発現の上昇が、ミクログリア/マクロファージ(MΦ)活性化阻害薬であるミノサイクリン(Mino)の前投与により減弱することを示した。本年度は、LPSによりIL-1βの発現が上昇する細胞の分布を、免疫組織化学を用いて検討した。その結果、IL-1β陽性細胞は終板脈管器官でのみ観察された。GnRHニューロンの細胞体が多く存在するPOAでは、IL-1β陽性細胞は観察されなかった。続いて、LPSに反応してIL-1βの発現が上昇する細胞の細胞種の同定のため、Iba1またはCD11b(ともにミクログリア/ MΦのマーカーとして広く用いられている)とIL-1βとの二重免疫染色を行った。その結果、IL-1βはIba1陽性細胞の一部の集団に限局して観察された。一方、CD11b陽性細胞でのIL-1βの発現は観察されなかった(第39回日本神経科学大会にて発表予定)。次に、LPSのLHパルス状分泌抑制へのミクログリア/ MΦ系細胞の関与を検討した。その結果、LHサージ状分泌抑制と異なり、Minoの前投与による抑制の回復は観察されなかった(第93回日本生理学会にて発表)。以上の結果より、終板脈絡器官のIba1陽性細胞の一部がIL-1β産生を介して、LPSによるLHサージ状分泌抑制に関与している可能性が示唆された。
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