研究課題
凍結保存技術の進歩により、担癌患者における卵巣凍結が普及しつつあるが、凍結による生殖細胞のDNAメチル化異常については未だ解明されていない。我々は雌雄始原生殖細胞の包括的なDNAメチル化マップ(DNAメチローム)を作製し、卵巣凍結による生殖細胞形成過程のDNAメチロームへの影響について詳細なプロファイリングを行うことを計画した。まず、卵巣組織保護作用を持つ物質を検討する中で、テストステロンに注目し、検討することとした。不妊症患者における血清テストステロン値は、卵巣予備能と正の相関関係を示した。また、卵胞顆粒膜細胞のアポトーシス誘因蛋白であるBimELの発現が高い群では、発現が低い群と比較して血清Testosterone値が低いことが分かった。不死化顆粒膜細胞を用いた検討では、膜型アンドロゲン受容体の刺激によりPI3K/Akt-FoxO3aシグナル経路を介してBimELの発現が抑えられ、PARP、Caspase3の活性が抑えられた。以上より、テストステロンには卵巣顆粒膜細胞に対する抗アポトーシス作用があることが示唆された。現在臨床研究として、不妊症例における卵巣予備能低下症例に対するテストステロン投与の有用性について検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
凍結卵巣組織より得られる生殖細胞が形成される過程のDNAメチロームへの影響について検討する計画を立て、初めに卵巣組織保護作用について検討を行った。テストステロンが卵巣顆粒膜細胞に対する抗アポトーシス作用を持つことを明らかにした。
卵巣保護作用についての研究を進め、効率よい卵巣組織凍結技術の確立を目指す。
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PLoS One
巻: 23 ページ: 1-17
10.1371/journal.pone.0115618