研究課題/領域番号 |
26861348
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研究機関 | 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所) |
研究代表者 |
宮本 雄一郎 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), その他部局等, その他 (70634955)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 子宮体癌治療 / 抗酸化ストレス / 分子メカニズム解明 |
研究実績の概要 |
①SIRT6は子宮体癌細胞株に対しがん抑制的に働く 子宮内膜不死化細胞(EIC)と子宮体癌16細胞株のSIRT1とSIRT6タンパク発現をウェスタンブロット法で比較した。SIRT1には一定の傾向を認めなかったが,SIRT6発現は子宮体癌細胞株でEICより有意に低かった。また子宮体癌104症例のTMA(tissue microarray)を使用し,SIRT6の免疫組織染色したところSIRT6核内高発現群では,低発現群と比較しOSが延長傾向にあった。SIRT6低発現であった子宮体癌細胞株AN3CA,KLE2株を用い、空ベクター(コントロール)とSIRT6プラスミドをトランスフェクションし生細胞数を評価したところ、2株ともSIRT6過剰発現で有意に細胞増殖が抑制された。さらにsiNC(コントロール)と2種類のsiSIRT6を添加し,生細胞数を評価したところ、2株ともSIRT6ノックダウンで有意な細胞増殖亢進が認められた。またフローサイトメトリーを用いて、細胞周期変化とアポトーシス誘導を評価したところ、SIRT6過剰発現で有意なsubG1の増加とアポトーシス誘導を認めた。以上からSIRT6は子宮体癌細胞株に対しアポトーシスを誘導し細胞増殖を抑制することが示唆された。 次にアポトーシス関連タンパクの発現を解析したところ、SIRT6過剰発現でsurvivinの発現低下を認め,rtPCRでsurvivin mRNA発現低下を認めた。またsurvivin luc ベクターを用いてAN3CA株でルシフェラーゼアッセイを施行し、SIRT6はsurvivinのプロモーター活性を有意に抑制していた。以上からSIRT6は子宮体癌細胞株に対しsurvivinの転写抑制を介しアポトーシスを誘導することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SIRT6の子宮体癌に対する抗腫瘍効果について、細胞株を用いたin vitroの実験ではあるが、酸化ストレスを介した抗腫瘍メカニズムが明らかにできた。これは当初の目的の約半分が終了した状態であり、本内容で論文作成も順調に進み、publishの目処もついている。
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今後の研究の推進方策 |
SIRT6は低血糖下で亢進するHIF1α発現を抑制することが報告されているが低酸素下での挙動は明確に示されていない。そこでAN3CA株を用いて1%の低酸素条件下でempty vector(コントロール)とSIRT6プラスミドをトランスフェクションしSIRT6が低酸素下ではHIF1αの発現誘導を介し細胞増殖を亢進させる可能性を検討する。またTMA(tissue microarray)を用いてSIRT6とsurvivinの発現の相関を臨床検体で評価し,in vitroでのSIRT6とsurvivinの関係が再現されるか評価したい。 また、SIRT6の発現を誘導する薬剤を同定し子宮体癌細胞株への効果を評価し,将来的な臨床での治療薬剤としての使用に繋げたい。 次に,低酸素下でSIRT6の細胞増殖亢進の機序が真にHIF1α依存性かどうかをsiRNAを用いたノックダウンを施行し評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度までの基礎実験や関係実験室より抗体・コンストラクトの準備・提供があったため、高額な物品の購入が必要なかった。また、共同実験をしている東大産婦人科学教室での実験器具・薬剤の使用がかのうであったため、予想より必要費用が大幅に少なく済んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
今後新たに効率のよい抗体・コンストラクト・薬剤の購入を検討していること、場合によってはin vivoの実験に用いるマウス購入などで、高額な物品費用が必要になる可能性がある。 また、順調に実験成果が出ており、各種学会参加・発表や、論文作成・投稿に伴い旅費等が必要になってくる可能性が高い。
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