平成27年度は、受精後のエピゲノム非対称性を生み出す機構を明らかにすることを目指し、生殖細胞形成過程に着目し解析を進めた。前年度の研究結果より、卵子ゲノムのエピゲノム修飾に着目した。マウスを用いて未成熟卵子と成熟卵におけるトランスクリプトーム解析、エピゲノム(ヒストン修飾)解析を行った。 トランスクリプトーム解析の結果、マウス卵子ではX染色体の遺伝子群の発現低下が卵成熟に伴って生じることを明らかにした。さらに、X染色体不活化をつかさどる、X染色体不活化センターが卵成熟過程により、クロマチンが凝縮することを見出した。 一方で、X染色体不活化センターを制御する因子、Xist遺伝子におけるヒストン修飾(H3K9me3)は卵成熟過程において、転写抑制修飾が付加されることはないことが明らかとなった。 さらに、片親性胚を作出することで受精後に生じるX染色体のクロマチンダイナミクスを解析した。結果、卵成熟過程で凝縮するクロマチンが細胞分裂に伴い、弛縮することを見出した。また、このクロマチン脱凝縮は未受精卵への核移植では、再構成されないことから、核移植における初期化エラーの一因となることが示された。 これらの研究結果は、国際誌に発表した(Fukuda A et al. Scientific reports. 2015. Fukuda A et al. 2015. Development.)
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