研究実績の概要 |
これまでの研究からマウス初期発生胚におけるヒストン修飾が、母方ゲノム特有の状態を表していることが明らかとなった。特に、ヒストン3リシン9番目のメチル化と母方ゲノムの脱アセチルか現象が重要であることを突き止めた。これらの修飾は生殖細胞(卵子)過程で、生じ、母方ゲノムの凝縮を引き起こすことが明らかとなった(Fukuda, et al. Development. 2015. Fukuda, et al. Scientific reports. 2015)。 受精後の発生では、徐々にゲノムの弛緩が観察された。この現象は、受精直後はヒストン修飾によって制御されることが分かった。一方、着床直前の後期では、多能性関連因子であるOct4が特異的に核内へと移行することでゲノムの弛緩に重要な役割をしていることを突き止めた(Fukuda, et al. Reproduction. 2016. Fukuda, et al. PLoS Genetics. 2016)。 さらに、ゲノム弛緩をゲノム編集等の遺伝子改変することなく引き起こすことに成功し、致死性へとつながるXist遺伝子欠損胚の完全な致死性回避することを可能にした。これらの成果は、致死性となる胚を受精直後に一時的にエピゲノム状態を改変することで、正常な発生へとつなげることが可能であることを世界で初めて報告した(Fukuda, et al. PLoS Genetics. 2016)。このような技術は基礎生物学的知見に有益だけでなく、生殖医療への新たな可能性を示した。
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