研究課題
昨年度までに得られたデータでは、麻疹ウイルス(MV)の胎盤由来絨毛膜細胞(JAR)感染はウイルス増殖が遅く細胞障害性が低いことが明らかになった。本年度はこれらの事象に着目し、胎盤由来細胞でのMV持続感染株の樹立を試みた。JAR細胞に野生株およびワクチン株MVを感染させて20代以上継代を行った。細胞中のMVをリアルタイムPCR法、ウエスタンブロッティング法および間接蛍光抗体法(IF)で確認し、ワクチン株、野生株ともにMV持続感染細胞を樹立した。樹立した細胞のIFでは、100%の細胞でウイルス抗原が確認された。持続感染細胞の培養上清および凍結融解細胞を用いたタイトレーションでは、上清中および細胞中いずれも感染性のウイルスが見られたが、細胞中の方が感染性ウイルス量は多かった。MV持続感染細胞の生理学的な変化は、細胞内在性ATP量の減少と胎盤性ホルモン分泌量の増加、IFN産生が確認された。IFN産生は野生株よりもワクチン株で高かった。
2: おおむね順調に進展している
今年度はより実際の臨床症例を反映していると考えられる「胎盤由来細胞へのMV持続感染」を明らかにできた。本研究課題の進捗状況は順調であると考えている。
今後は、胎盤由来細胞におけるMV持続感染が及ぼす影響について、mRNAプロファイリングを中心に検討する。持続感染で転写活性が上昇する因子を選抜し、個別にJAR細胞および293T細胞等に導入して感染動態に及ぼす影響を検討する。
予算の99%以上は使用されており、ほぼ計画通りであった。
次年度も当初の予算通り執行予定である。
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病原微生物検出情報
巻: 36 ページ: 120-122
Am J Infect Control.
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10.1016/j.ajic.2015.02.022.