研究課題
平成27年度は頭頸部癌、特に喉頭癌および喉頭乳頭腫における臨床的検討とHPV感染との研究を主に行い以下の知見を得た。2001年1月から2012年12月までの12年間に当院にて根治治療を施行した喉頭癌T1症例108例における治療成績の検討を行った。初回治療として放射線療法を行ったのが88例、喉頭直達鏡下手術を行ったのが20例であった。全症例の5年粗生存率は95.5%で、原病死したのは2例であった。放射線療法を行った88例のうち10例が局所再発し、4例に喉頭全摘術を施行した。喉頭直達鏡下手術を施行した20例のうち4例が局所再発し、3例は放射線療法にて救済した。以上より、喉頭癌T1症例は局所制御、生存率ともに良好であった。放射線療法は喉頭直達鏡下手術に比べ再発率は低かったが、再発が発覚した時点において喉頭全摘が必要となる場合もあった。喉頭直達鏡下手術は放射線療法に比べ局所再発率は高かったが、放射線療法での救済が可能であった。次に当科にて生検を行った喉頭乳頭腫症例14例に対してHPV感染の検討を行った。喉頭乳頭腫症例は14例中10例(71%)がHPV陽性であった。検出されたHPVはHPV6が9例、HPV11が1例であった。HPV陽性例は全例声門原発で、10例中5例に再発がみられた。HPV陰性例は全例自覚症状なく内視鏡検査で偶然発見されたもので、声門上原発であった。また全例外来での生検のみの経過観察にて再発はみられていない。以上のことから、喉頭乳頭腫はHPV感染によるものが多く、ワクチン接種により発症予防や腫瘍の増殖抑制の可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
喉頭癌および喉頭乳頭腫におけるHPV感染との関与を中心に臨床的検討を行い、得られた知見を報告することができたため。
引き続き頭頸部癌における癌化、予後因子の解明について検討を行う。
学会参加費用および学会出張旅費が想定よりも抑えられたため。
学会発表を当初の予定より増やす予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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