これまで申請者はアレルギー性鼻炎の感作と発症に関連する遺伝子の同定を行ってきた。その中で、スギ花粉症患者に最も高発現していたCystatin SN(CST1)に着目し、追認を行ってきた。CST1はスギ花粉症患者で高発現している一方で、感作のみでは発現が上昇しないこと、そしてアレルギー性鼻炎患者の鼻粘膜上皮細胞に存在していることを報告してきた。本研究ではCST1が鼻粘膜上皮細胞と線維芽細胞における機能解析を目的とした。 鼻粘膜上皮細胞におけるCST1の発現誘導について、培養鼻粘膜上皮細胞を用いて検討した。鼻粘膜上皮細胞では、非刺激の状態ではCST1の発現は低発現であったが、IL-4、IL-13、tryptaseによりCST1の発現が増加した。アレルゲンはプロテアーゼ活性により気道上皮細胞を傷害することが知られている。鼻粘膜上皮細胞におけるCST1のバリア機能への影響を、リコンビナントCST1をスギ花粉と37℃で30分間前処理後、鼻粘膜上皮細胞に刺激を行い、鼻粘膜上皮細胞のZO-1とclaudin-1発現への影響を調べた。その結果スギ花粉による刺激では、鼻粘膜のZO-1とclaudin-1のmRNAが減少したのに対し、スギ花粉とリコンビナントCST1で前処理すると、これらの発現が非刺激の状態に保たれることを見出した。 鼻粘膜線維芽細胞に過酸化水素を添加すると、CST1の発現が上昇し、添加後24時間と48時間後のフィブロネクチンとコラーゲンのmRNAが増強した。さらに鼻粘膜線維芽細胞にリコンビナントCST1を添加すると、添加後にフィブロネクチンとコラーゲンのmRNAが増強した。以上のことより、鼻粘膜線維芽細胞では、フリーラジカルの刺激によりCST1が増加し、線維化へと誘導するフィブロネクチンとコラーゲンの産生をCST1が誘導することが示唆された。
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