研究実績の概要 |
平成26年度は日本人難聴患者の中でAuditory neuropathy spectrum disorder(ANSD)患者を抽出し、これまでANSDの原因と報告があるOTOF,PJVK,GJB2遺伝子変異の頻度やその種類を明らかにすることを目的に、当施設および共同研究施設よりANSDの臨床像を示す患者に直接シークエンス法にてOTOF,PJVK,GJB2遺伝子の変異解析を行った。 末梢血より抽出されたDNAを用い、OTOF,PJVK,GJB2遺伝子のスプライシング部位を含む全エクソン領域を直接シークエンス法により解析した。病的変異の判断は、変異の種類、家系内での整合性、コントロール群における頻度などを検討して行った。 今回変異検索を行った11人中8名(72.7%)に少なくとも一つのOTOF遺伝子変異を認めた。変異の内訳としては3名がホモ接合体、3名がコンパウンドへテロ接合体、2名がヘテロ接合体であった。PJVK,GJB2遺伝子変異は認めなかった。よって、今回変異検索を行った11人中6名(54.5%)がOTOF遺伝子変異による難聴の確定診断となり、ヘテロ接合体の2名(18.2%)もOTOF遺伝子変異による難聴の可能性があると考えられる。よって、日本人ANSD患者における原因遺伝子の内訳はOTOF遺伝子(54.5~72.7%)、PJVK遺伝子(0%)、GJB2遺伝子(0%)であることが明らかとなった。 また、OTOF遺伝子のp.R1939Q変異はfounder effectにより日本人において高頻度で同定される変異であることが知られており、今回OTOF遺伝子変異が同定された8名のうち7名(87.5%)がp.R1939Q変異を有していた。ANSD患者においてはp.R1939Q変異のスクリーニングを行うことにより、診断率の向上が見込めると考えられる。
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