研究実績の概要 |
平成28年度は、ANSD患者25症例の末梢血より抽出されたDNAを用い、OTOF,PJVK,GJB2遺伝子のスプライシング部位を含む全エクソン領域を直接シークエンス法により解析した。病的変異の判断は、変異の種類、家系内での整合性、コントロール群における頻度などを検討して行った。その結果、変異検索を行った25人中18名(72.0%)に少なくとも一つのOTOF遺伝子変異を認めた。変異の内訳としては7名がp.R1939Q変異のホモ接合体、9名がコンパウンドへテロ接合体、2名がヘテロ接合体であった。1名(4.0%)にGJB2遺伝子変異を認め、c.35insGとc.235delCのコンパウンドへテロ接合体であった。PJVK遺伝子変異は認めなかった。したがって、日本人において高頻度で同定されるfounder mutationである p.R1939Q変異はOTOF遺伝子変異が同定された18名のうち16名(88.9%)に認めた。ANSD患者においてはp.R1939Q変異のスクリーニングを行うことにより、効率的な診断が見込めると考えられる。また、ANSD患者の中でOTOF遺伝子変異が同定された症例のうち、臨床データが渉猟し得た5症例に関して人工内耳の効果について検討を行った。5症例9耳の装用閾値の平均は35.8dBであり、一般的な人工内耳装用児の装用閾値との差異は認めなかった。また発達評価としては新版K式発達検査、WISC-Ⅳ、日本語言語発達検査パッケージであるALADJINなどを用いて評価を行ったが、OTOF遺伝子変異によるANSD患者の発達状況は一般的な人工内耳装用児と同等であった。
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