平成28年度は、前年度までに引き続き日本人高齢者700例を対象に、海外のコホートスタディで老人性難聴と関連があると報告されている遺伝子(GRHL2、NAT2、GRM7、QGAP2)、国内のコホートスタディで老人性難聴との関連が報告されている遺伝子(EDN1、UCP2、FAB2、MTHFR 、MTR)および騒音性難聴との関連が報告されている遺伝子(KCNE1)および遅発性の遺伝性難聴との関連が報告されている遺伝子(COCH、CDH23)に関して、平均聴力閾値(250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz、8000Hzの平均値)を基に標準化(Zスコア化)を行い、老人性難聴を有する群と老人性難聴を有さない群におけるSNP型の頻度に関して統計学的検討を行った。その結果、海外および国内において過去に老人性難聴との相関が報告されていた遺伝子(GRHL2、NAT2、GRM7、QGAP2、EDN1、UCP2、FAB2、MTHFR 、MTR)に関しては、本研究で対象とした母集団では有意な相関を認めず、replicationが得られなかった。海外で報告された老人性難聴関連遺伝子に関しては、日本人集団との間で周辺のハプロブロックが異なることにより再現が得られなかった可能性が考えられる。 また、遅発性の難聴を引き起こすことが報告されているCDH23遺伝子およびCOCH遺伝子の多型に関しても同様に検討を行ったところ、COCH遺伝子の多型と老人性難聴の間に有意な相関を認めることが明らかとなった。現在、得られた成果を取りまとめて投稿論文として報告を行う準備をしている。
|