ヒト嗅粘膜から単離したヒト嗅細胞を用いてのパッチクランプ法による膜電流の解析は他の動物、例えばイモリやマウスと比べて、内向き電流を持たない細胞が多く認められた。外向き電流は全ての細胞で記録し、TEAによる抑制作用まで明らかにしたが、内向き電流を記録できた細胞は1つしか得られなかった。この1つの記録をI-V曲線に変換し、先行研究のResterpoらの記録や、イモリの電流と比較するとほとんど変わりはなく、正しい記録であることが推察された。この結果はヒト嗅細胞において、単離による実験法では、他の動物と違い、内向き電流が記録されない細胞が多く、実験法の問題なのか、ヒト嗅細胞特有のものなのかは、さらなる詳細な研究が必要であること示唆した。 さらに、炎症関連物質としてプロスタグランジンの暴露を行ったが、有効な結果はみとめられず、外向き電流に変化はなかった。内向き電流、または匂い受容器電位であれば、その変化がみられたかもしれないが、上記の結果のため、いまだ実験を継続する必要がある。
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