研究課題/領域番号 |
26861373
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岸本 曜 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (80700517)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 声帯 / スローサイクリング細胞 |
研究実績の概要 |
①胎生期のラット声帯においてスローサイクリング細胞の評価時期に関する検討を行った。妊娠ラットにBrdUを投与し、期間をあけて胎生期ラット声帯を評価したところ、声帯粘膜固有層の大半の細胞が標識され、スローサイクリング細胞を同定するには至らなかった。ラットの短い妊娠期間ではスローサイクリング細胞の同定は難しいと考えられた。 ②成体ラット声帯におけるスローサイクリング細胞を同定するため、BrdUを投与し、1,5,10,15日目に標識された細胞の分布を検討した。標識された細胞は経時的に減少し、声帯では10日目が評価のタイミングとして適していると考えられた。 ③BrdU投与後10日目の声帯の切片を細胞増殖マーカーであるKi-67で染色し、BrdU,Ki-67陽性であるスローサイクリング細胞の成体ラット声帯における分布を確認した。大半が上皮基底層に存在し、基底層以外の上皮層、粘膜固有層や声帯黄斑におけるスローサイクリング細胞の分布は非常に限られたものであった。 ④ラット声帯におけるスローサイクリング細胞のチャラクターを検討するため、免疫組織科学を行った。スローサイクリング細胞以外の上皮細胞ではほぼ全て上皮系のマーカーを発現しているのに対し、上皮におけるスローサイクリング細胞の一部はE-cadherinやCK5などの上皮系のマーカーを発現しておらず、間葉系細胞のマーカーであるVimentinや内皮細胞マーカーであるCD31を発現していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①胎生期ラット声帯におけるスローサイクリング細胞を同定するため条件検討を繰り返したが、結果的には同定は困難であった。 ②成体ラット声帯においてもスローサイクリング細胞を再現性を持って同定するのにBrdUの投与タイミング、量など条件検討を繰り返す必要があったが、最適な評価タイミングが判明し、スローサイクリング細胞の局在を再現性をもって確認することができた。 ③各種染色により声帯スローサイクリング細胞のキャラクターを検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
①ラット声帯におけるスローサイクリング細胞のチャラクターを明らかにすべく、免疫組織科学などで検討を続ける。 ②スローサイクリング細胞群を回収し、細胞レベルでの検討も行う。 ③声帯傷害モデルを作成し、声帯創傷治癒過程におけるスローサイクリング細胞の役割を検討する。スローサイクリング細胞は上皮基底層に多く存在することが確認できたため、局在部位温存は困難であり、スローサイクリング細胞温存声帯傷害モデル作成は行わない。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたスローサイクリング細胞のキャラクターを明らかにするためのタンパク,遺伝子レベルでの解析がまだ終了しておらず,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
予定通り,スローサイクリング細胞のキャラクター解明のために抗体などを購入するために使用する予定.またこれにより他の上皮細胞や線維芽細胞とキャラクターに差があることが明らかになれば,マイクロアレイなどを用いた網羅的解析の施行も計画している.
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