研究課題
癌の治療において低酸素状態は重要な要素であり、特に低酸素下では放射線の治療効果が低くなることが知られている。今回我々は低酸素を伴う頭頸部癌においてグルコースの取り込み阻害と放射線治療が相乗効果を生じるか検討を行った。 18F-FDG-PETによる頭頸部扁平上皮癌患者138症例での取り込みの確認を行った。この結果全ての症例において原発巣への強い取り込みを認めた。この結果は頭頸部扁平上皮癌ではグルコースの消費量が多いことを示している。続いて頭頸部扁平上皮癌の細胞株(FaDu、Detroit562、BICR6、BICR18)において検討を行った。グルコースの代謝、特に嫌気性代謝に関与するタンパク質としてGLUT1、LDHA、MCT4の発現をWestern blotting、Flow cytometory、Immunocytochemistryにて確認した。その結果、FaDu、Detroit562、BICR6においてこれらのタンパク質の強い発現を認めた。低酸素の状況を作成し、上記の蛋白質の発現を確認したが、低酸素下では発現は更に増強した。頭頸部癌においてはグルコースの代謝、特に嫌気性代謝が亢進しており、低酸素下では嫌気性代謝が更に亢進していると考えられた。次にGLUT阻害薬であるPhloretin(Ph.)を用いて細胞株においてグルコースの取り込み抑制を行った。2DG uptake assayにて実際に取り込みが阻害されていることを確認した。低酸素下においても増殖能はPh.+放射線(RT)投与群にて著明に低下した。またTUNEL染色ではPh.+RT群は多くの細胞が染色され、アポトーシスを生じている可能性を示唆した。
2: おおむね順調に進展している
In vitroでの実験は順調に進行しており、おおむね計画通りに進んでいると思われる。In vitroの系ではグルコースの取り込み阻害と放射線の照射が相乗効果を生じることがわかり、今後のIn vivoの実験につなげることができた。In vivoでの実験においてはマウスに腫瘍を生着させ、放射線の照射ができる準備を整えることができた。これによって本年はIn vivoの実験が進んでいくと思われる。
今までの実験結果をもとに今後は、In vivoでの検証を行う。マウス癌移植モデルの作成ができたため、まずはマウスに移植した癌組織での低酸素の評価を行う。マウスの尾静脈よりpimonidazoleを投与し、その後癌組織の薄切行い、免疫染色を行う。それによって移植癌組織内の低酸素状態を評価することができる。低酸素状態となる腫瘍の大きさを同定したうえで、低酸素とそうでない部位が混在する腫瘍の状態でPhloretin、コントロールとしてDMSOを皮下注射し腫瘍の増大を見る。その後Phloretinを投与し、且つ放射線の外照射を行い、Phloretin投与と外照射を行った群の腫瘍が縮小するかの確認を行う。
予想以上に今まである物品で実験はスムースに進んだため、実験の試薬を省略することができたため。
次年度のマウスの補充や抗体の費用として使用予定である。
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Cancer Med.
巻: 3 ページ: 1368-76
10.1002/cam4.295.
耳鼻咽喉科・頭頸部外科
巻: 86 ページ: 812-818