研究課題/領域番号 |
26861376
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大薗 芳之 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10724768)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | TRPV4 / 浸透圧 / メイロン |
研究実績の概要 |
末梢性眩暈症の急性期には点滴等の薬物治療が行われることが多いが、特に使われる頻度の多い薬剤の一つが7%炭酸水素ナトリウム(メイロン®)である。弱塩基性緩衝剤であるメイロンは局所のアシドーシス改善や血流改善の目的で用いられるが、その明確な作用機序は未だ不明である。メイロン®は高張液でもあることから、眩暈発作時には前庭神経系が低張状態にさらされている可能性も考えられ、メイロンは低張状態を是正するために作用している可能性がある。 一方、侵害刺激受容体のTRPV4受容体は一般体性感覚系や腎、肺、視床下部、蝸牛等に存在し、細胞外液の低浸透圧化や30度以上の熱、機械刺激、4αPDDなどで活性化する。内耳においてはTRPV4受容体の発現は蝸牛や内リンパ嚢ですでに報告がある。 我々は予備実験でラット前庭神経節においてTRPV4受容体が発現している可能性を見出しており、平成26年度はRT-PCR法やin situ hybridization法にてTRPV4遺伝子発現を、免疫組織化学法で蛋白の発現を、カルシウムイメージング法にて低浸透圧刺激や4αPDDに応答し、かつそれらの応答がTRPV受容体のアンタゴニストであるルテニウムレッドによって抑制される前庭神経節細胞の存在を確認した。 以上のことから浸透圧受容体TRPV4が前庭神経節細胞に発現していることが明らかとなり、TRPV4がめまい発作時に投与されるメイロンの作用機序に関与している可能性も考えられ、今後の研究が待たれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度の予定では、RT-PCR法やin situ hybridization法、免疫組織化学法、カルシウムイメージング法を用いてラット前庭神経節におけるTRPV4受容体の発現を確認するだけでなく、眼振誘発によるTRPV4遺伝子の発現変化を確認することを予定していたが、まだこの実験が予備段階で進んでおらず、やや遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はカルシウムイメージング法を用いてTRPV4受容体の低浸透圧刺激や4αPDDへの応答を改めて確認すること、さらにはアゴニスト、アンタゴニストを用いてTRPV4がめまいにおいて果たす役割やその機序を解明すること、ノックアウトマウスを用いた実験などを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の実験は既に予備実験として行った内容を繰り返し行うことが殆どであったため、実験の回数自体が少なかったこと、新たに試薬や消耗品を購入することが予想以上に少なかったためと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は実験回数を増やすことや、新たな実験を行うことを考えており、支出は平成26年度よりも増加することを見込んでいる。
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