研究実績の概要 |
本研究の実施計画に沿って、研究を行った。中咽頭癌の対象症例81例の病理組織からDNAを抽出し、ADH1B,ALDH2の遺伝子多型の検索を行い、合わせてp16免疫染色を行った。そののちに臨床情報を照合し、これらの因子と予後との関係を検討した。 当初加齢していたように、p16陽性例は予後が有意に良好であった。p16陰性例の中で、ALDH2のヘテロ、ホモで分類すると、ALDH2ヘテロ群で予後が不良な傾向が示された。 この結果により当初想定したように、日本人のようにアルコール代謝酵素の弱い種族では、HPVの要因の次にALDH2の遺伝子多型が予後にも影響を与えていることが示唆された。さらに、他の咽頭癌や食道癌といったアルコールが要因で発生するとされている疾患の重複癌の発生率もALDH2の遺伝子多型により有意な差が認められた。この点から特にALDH2ヘテロの症例では、他の重複癌の発生率が高く、特に上部消化管内視鏡検査などで定期的な精査を行うことが重要であると考えられた。 本研究の結果より、中咽頭癌の種族による違いの存在が示唆され、疾患の予防や治療方針の変更などに影響を与え、こういった遺伝子マーカーによるオーダーメイド治療への足掛かりとなる研究であると考えており、今後も少量数を増やし検討を行っていく予定である。
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