研究課題/領域番号 |
26861380
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小嶋 康隆 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80464270)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 色素性乾皮症 / 感音難聴 / XPAモデルマウス |
研究実績の概要 |
<実験手法と結果>平成26年度の実験で11匹のC57BL/6Jアルビノマウス(年齢 38~40週)を使用した。うち6匹はXPA遺伝子欠損マウスであり、残り5匹の野生型を対照群とした。比較する項目は聴性脳幹反応(以下ABRと記す)での聴力レベル、蝸牛の形態、ラセン神経節細胞数とした。すべてのデータは平均値±SEとし、ABRの測定値とラセン神経節細胞密度はt検定で統計学的評価を行い、p<0.01を統計学的有意とした。各群に対し腹腔麻酔下にABRを両耳測定し、最大音響レベルから5dB音圧を下げ、波形が認められる最少音響レベルを聴力レベルとした。XPA群の平均聴力は4kHz 79.5dB・8kHz 71.9dB・16kHz 67dB、野生型の平均聴力は4kHz 50dB・8kHz 31.9dB・16kHz 27.7dBで、3周波数のすべてにおいてXPA群で統計学的に聴力低下を認めた。ABR測定後に摘出した蝸牛を処理しHE染色を行い観察したところ、ラセン神経節細胞とラセン神経は野生型よりXPA群で退行していた。蝸牛軸と軸から30マイクロメートル離れた切片をらせん神経節細胞数の評価に用いた。10000平方マイクロメートル当たりのⅠ型ラセン神経節細胞数をBZ-H1AEを用いてカウントし、頂回転・中回転・基底回転の各3切片の平均値を計算した。XPA群の平均ラセン神経節細胞数は頂回転12.6個・中回転12.7個・基底回転5.4個、野生型の平均ラセン神経節細胞数は頂回転19.0個・中回転21.3個・基底回転7.9個で、XPA群で頂回転・中回転においてラセン神経節細胞数が統計学的に減少していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
XPA遺伝子欠損マウスの加齢モデルを作成し、ABR・蝸牛の形態・ラセン神経節細胞数において対象群に比し早期に障害が出現することが判明した。マウスの実験手技および評価法に習熟することができ、以後の実験においてより効率化が期待できる。また臨床研究として、神戸大学医学部附属病院皮膚科と連携し、当院へ通院するXPA症例の標準純音聴力検査とABRを行い、経時的な変化を記録・評価している。この検査は平成27年度以降も継続して行う予定であり、同一施設での長期間にわたる聴覚機能データの蓄積は疫学・神経学的予後診断において本邦の医療に益するものとなる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、XPA遺伝子欠損マウスと対象群それぞれの音響暴露モデルを作成し、内耳の脆弱性を検討する。また、治療法の開発として、外頸静脈へのカテーテル留置による全身持続投与や、微小浸透圧ポンプによる内耳への局所投与を検討する。内耳保護を期しフリーラジカルスカベンジャーや抗酸化剤、アポトーシス抑制剤などを単剤あるいは併用して投与する予定であり、XPA遺伝子欠損マウスの薬剤投与群/非投与群でABRおよび蝸牛形態、ラセン神経節細胞数を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1000円以下であり試薬等の購入額に満たず、使用できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の助成金と合わせ無駄なく使用する予定である。
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