研究課題/領域番号 |
26861381
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井之口 豪 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10457046)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リーリン / オリーブ蝸牛束 / 音響外傷 / 加齢性難聴 |
研究実績の概要 |
リーリン変異動物(以下、Yotariマウス)を用い、脳幹の神経核の位置異常について、免疫組織化学的な検討を行った。その結果、オリーブ蝸牛束の反対側に投射する線維である内側神経核の位置異常があることが示された。平成26年度の目標であった蝸牛へのトレーサー注入手技は確立でき、オリーブ核外側核、内側核へのトレーサーの標識を確認した。Wild typeでは両側性にオリーブ核内側核に標識されるニューロンを認めたが、Yotariマウスではオリーブ核外側核には標識を認めたが、内側核には標識を認めなかった。 Wild、Yotariマウスそれぞれの蝸牛を摘出して切片を作成し、コルチ器の形態を観察した。H-E標本における評価ではYotariマウスWild typeとの間で、有毛細胞やらせん神経節細胞などの形態、数に差がないことが分かった。 Yotariマウスの聴覚評価で、聴性脳幹反応(ABR)を行い、同じ週数のWild typeと比較して難聴の進行が早いという結果が得られた。周波数別では8kHzと16KHzで統計学的な有意差を認めた。つまり、Yotariマウスにおける難聴の原因は蝸牛に由来するのではなく、中枢性の遠心性フィードバックの欠如により、難聴が進行するということが判明した。加齢性難聴においてオリーブ蝸牛束は蝸牛の変化よりも先に生じることが近年指摘されており、Yotariマウスは音響外傷と加齢性難聴の両方のモデルとして使用できる可能性があるという結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
聴覚評価を聴性脳幹反応と耳音響反射で行う予定であったが、耳音響反射の器械が予算の都合で購入できなかった。またオリーブ核の構築異常があることを示唆する結果が得られたが、これまでの結果からは未だばらつきがあるため定量評価が難しく、現在は染色方法を工夫して定量化に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
アセチルコリンエステラーゼ染色およびコリンアセチルトランスフェラーゼ抗体を使用した免疫染色により、オリーブ核内側核と前庭神経運動核の定量評価を行い、オリーブ核内側核の腹側への遊走障害を明らかにする。ヘテロタイプでも難聴を示す結果が聴性脳幹反応の結果で得られており、加齢性難聴および騒音性難聴のモデルとして使用できないか、追加実験を行う。
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