研究課題/領域番号 |
26861386
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
青井 典明 島根大学, 医学部, 講師 (80452556)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アレルギー性鼻炎 / Toll様受容体 |
研究実績の概要 |
1)OVA腹腔内投与マウスにておいて、反応相でLPS投与の用量設定を行った。100μg/mlのLPSの共点鼻投与で症状、鼻粘膜好酸球浸潤の有意な増加を確認し、その再現性を確認した。この投与量にて鼻粘膜全体でのウエスタンブロットでTH2サイトカインが上昇していることを確認した。頸部リンパ節を採取・培養し、頸部リンパ節でのTH2サイトカイン産生が増加していることを確認した。Toll様受容体4遺伝子変異マウスであるC3H/HeJマウスおよび肥満細胞欠損マウスでLPS共点鼻での鼻アレルギーの増悪がないことを確認した。これらのことからLPSによるアレルギー性鼻炎の増悪は肥満細胞のToll様受容体を介していることが考えられた。 2)LPSの肥満細胞に対する効果を骨髄由来肥満細胞を用いて検討した。LPSの投与にて骨髄由来肥満細胞からのTH2サイトカインの産生を確認した。しかしながら脱顆粒の促進は認められなかった。そのため骨髄由来肥満細胞のFcε受容体を架橋すると同時にLPSを添加してみたが脱顆粒の促進は認められなかった。これらのことからLPSは肥満細胞の脱顆粒を促進させ局所にTH2細胞を引き寄せるのではなく、直接的に肥満細胞のTH2サイトカインの産生を促すことでアレルギー性鼻炎の病態を悪化させていると考えられた。 3)OVA腹腔内投与マウスにておいて、反応相でリポプロテインの共点鼻を行ったが、組織学的な検討では鼻粘膜組織に好酸球のみでなく好中球も誘導され、さらに急性鼻炎による鼻掻き症状も加わるため、そのリポプロテインの用量設定・評価に関して引き続き検討が必要な状況で難渋している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LPSおよびリポプロテインの肥満細胞への直接の影響を調べるため、骨髄由来肥満細胞の脱顆粒への影響を同時進行で検討しているおり、かつ骨髄由来肥満細胞の作製に約6週間の培養期間が必要でもあり時間を要している。 OVA腹腔内投与マウスにておける反応相でリポプロテインの共点鼻での検討では、組織学的な検討では鼻粘膜組織に好酸球のみでなく好中球も誘導され、さらに急性鼻炎による鼻掻き症状も加わり、その投与量と評価に難渋している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き反応相でリポプロテインの共点鼻での検討では、細かく濃度設定を行い鼻アレルギー症状および組織学的な検討を行っていく。リポプロテインの肥満細胞に対する直接の作用を評価するため、LPSと同様に骨髄由来肥満細胞を用いてサイトカイン産生と脱顆粒への影響を検討していく。 誘導相におけるLPSとリポプロテインの影響を検討していく。OVA点鼻感作マウスにLPSあるいはリポプロテインを感作時から点鼻していく。できるだけ円滑に進むように、OVA点鼻群、OVA+LPS点鼻群、OVA+リポプロテイン群の3群同時に行い、症状、鼻粘膜への好酸球浸潤の評価を行う。誘導相のみの投与であれば、その後の反応相でのOVA点鼻による鼻粘膜への好中球出現の可能性はまず考えられないため、反応相でのリポプロテイン投与のように評価で難渋する可能性は低いと考えられる。 動物実験を円滑に行うため、引き続き当教室の森倉一朗講師および島根大学総合科学研究支援センター山田高也准教授と共同で実験を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
ELISAやウエスタンブロットの試薬、肥満細胞培養のためのrIL-3などに関して取り急ぎ手持ちのもの使用したためこちらに費用がかからず、実験動物および試薬としてのLPS、リポプロテインおよびHE染色の費用のみが必要であった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は手持ちのELISAやウエスタンブロット試薬がなくなるので購入する。 平成27年度は、誘導相におけるLPSあるいはリポプロテイン投与の検討を予定しているが、LPS濃度およびリポプロテイン濃度の至適濃度が不明のため、実験の反復と費用がかかることが予想され、実験動物の購入、ELISAおよびウエスタンブロットのための試薬、HE染色に係る費用などが多く必要となる。本検討とともに、誘導相におけるリポプロテインの評価を行うために、Toll様受容体2欠損マウスおよびToll様受容体4遺伝子変異マウスであるC3H/HeJマウスおよびそのコントロールマウスであるC3H/HeNマウスの購入等で費用を要する。また誘導相におけるリポプロテインの評価を行うために、肥満細胞欠損マウスの購入が必要となる可能性がある。
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