研究課題
唾液腺癌は発生頻度が低い上に多種多様な組織タイプで構成されるため,その病態は十分には解明されていない。治療の第一選択は手術であるが,特に高悪性度の組織型においては高頻度に転移再発を来し,生命予後を大きく左右する。にもかかわらず,唾液腺癌の再発や転移に関わる分子機構の解明は未だ不十分であり,遠隔転移例に対する有効な化学療法レジメンも存在しないのが現状である。本研究では,再発や転移を含めた唾液腺癌の臨床的悪性度に関わる分子学的異常を明らかにし,分子学的背景に基づいた新たな個別化治療の導入へとつながる知見を集積することを目的とし,検討を行った。結果として,ERM(ezrin-radixin-moesin)ファミリー蛋白分子の一つであるezrinの高発現が唾液腺癌の遠隔転移発生に関与しており,唾液腺癌の独立した予後不良因子であることを明らかにした。とりわけezrinと受容体型チロシンキナーゼの一つであるHER2を同時に高発現する群は,その他の群と比較して有意に高率に遠隔転移を発症し,生存率が著明に低下していることを明らかにした。また,近年注目されている免疫チェックポイントの一つであるPD-L1の発現が,唾液腺癌症例において無病生存率に負の相関があることを明らかにした。
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Human Pathology
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10.1016/j.humpath.2017.02.017.
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