頭頸部扁平上皮癌でNox発現量を比較すると、初期癌ではNox1(0.6)、Nox2(2.0)、Nox3(0.6)、Nox4(0.3)、進行癌では Nox1(0.8)、Nox2(2.8)、Nox3(0.6)、Nox4(0.8)であり、Nox2の発現量が一番多いが、進行癌でNox2の発現が低下しているという仮説は正しくなかった。甲状腺癌ではDuox発現量を比較すると、初期癌でDuox1(0.4)、Duox2(1.4)、進行癌でDuox1(0.0)、Duox2(1.0)と、進行癌でDuox2の発現低下を認め、仮説を支持する結果が得られた。唾液腺癌では、初期癌及び進行癌でDuox1とDuox2の発現を認めなかった。癌によって発現が低下したのか、元々発現がなかったのか、両者の可能性が考えられた。 頭頸部癌症例における食細胞の貪食能やアポトーシスに関連するサイトカイン等について調べた。頭頸部癌症例の好中球貪食能60.2%(健常者61.8%)、好中球殺菌能99.2%(健常者99.5%)、IL-1β 0.2(健常者0.2)、IL-2 5(健常者5)、IL-8 9(健常者13)、IL-12 8(健常者8)、CD11b 98.4(健常者98.1)、CD11c 98.6(健常者98.7)、NK活性11.5(健常者12.8)、GM-CSF 5.0(健常者5.0)と健常者との差を認めなかった。一方、頭頸部癌症例ではM-CSF 633pg/ml(健常者302)、TNF-α1.3pg/ml(健常者0.6)、sTNF-R1型1664pg/ml(健常者705)、sTNF-R2型3674pg/ml(健常者1476)の4項目が有意に上昇していた。頭頸部癌症例における陽性率は、sTNF-R1型(カットオフ値1100pg/ml)62%(健常者3%)、sTNF-R2型(カットオフ値2050pg/ml)81%(健常者3%)であった。当科の頭頸部癌症例で調べると、既存の腫瘍マーカーの陽性率がSCC 61%、Tg(サイログロブリン)55%、抗Tg抗体40%、シフラ40%であった。sTNF-R1型及びsTNF-R2型は感度の高い新たな頭頸部癌の腫瘍マーカーとして有効であると考えられた。
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