聴覚において重要な働きを担う蝸牛のラセン神経節細胞の発生・分化のメカニズムについては未だ不明な点が多く、当研究はそのメカニズムの一部を明らかにすることを目的としてTis21遺伝子に着目した。Tis21遺伝子は、脳、小脳領域において神経細胞の発生・分化を制御していることが知られているが、内耳の発生・分化における機能についての報告はない。 Jackson研究所(アメリカ)よりTis21欠失マウスを購入し、繁殖を行った。野生型マウスと比較して妊孕性が非常に低く、比較的妊孕性の高い個体を選別して、繁殖を行ったため実験に必要な個体数を確保するのに時間を要した。十分量の個体数を確保した後、Tis21欠失マウス同士を交配してTis21欠失胎児マウスを得た。Tis21欠失マウスの頭部凍結切片を作製、免疫染色、insitu hybridizationを施行し、胎生期内耳におけるTis21蛋白の発現について検討を行っている段階である。今後はTis21欠失マウスの形態的評価(蝸牛形態、蝸牛有毛細胞数、ラセン神経節細胞数など)を行い、機能障害の病態について検討を行う予定である。また、内耳発生に関与しているとNgn1、NeuroD、Atoh1などの遺伝子との関連についても、免疫染色やin situ hybridizationなどを用いて調べる予定である。
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