研究課題/領域番号 |
26861401
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
阿部 亜由美 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (80644468)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | IgG4関連疾患 / 唾液腺 / 導管上皮細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,IgG4関連ミクリッツ病のヒト唾液腺および正常のヒト唾液腺の培養細胞,特に導管上皮および線維芽細胞に着目し,本疾患の病態を探ることである. 今年度の研究計画としては,ヒト正常顎下腺組織およびIgG4関連ミクリッツ病顎下腺組織を用いて腺上皮初代培養を行い,各タイト結合関連蛋白(Claudins,ZO-1,JAM-A,Tricellurinなど)の発現,サイトカインの発現をmRNAおよび蛋白レベル,免疫細胞学的に検討する予定であった. 今年度は,術前に同意を得られたIgG4関連ミクリッツ病の患者と他疾患で顎下腺摘出を行った患者の手術で摘出された顎下腺組織の一部から,顎下腺導管上皮の培養を行った.組織と培養細胞の一部は凍結保存して,今後の研究に用いる予定である. 今年度は,顎下腺組織や培養細胞を用いて,IgG4関連疾患患者の顎下腺上皮細胞に対するインターフェロンγの作用に着目し,研究を進めた.なかでも,インターフェロンγのタイト結合関連分子への影響を調べた.また,その他にもいくつかのサイトカインを用いて,タイト結合関連分子の抵抗性について研究を進めているところだ. 現時点では正常顎下腺のサンプルが少なく,IgG4関連ミクリッツ病のヒト顎下腺についてこれらの研究を進めているが,今後,正常のヒト顎下腺についても同様の研究を行い,またIgG4関連ミクリッツ病と正常との結果の比較についても行っていく方針である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
手術で得られたヒト顎下腺組織の検討では,IgG4関連疾患群および正常群においてタイト結合関連蛋白の発現に差異は認められず,顎下腺上皮細胞の抵抗性がvitroでも示唆された。次いで導管上皮細胞の初代培養系を確立し,各タイト結合関連蛋白(Claudins, ZO-1, JAM-A, Tricellurinなど)の発現,サイトカイン(Th2,Treg)の発現をmRNAおよび蛋白レベル,免疫細胞学的に検討し,さらに上皮バリア機能に関しては,TERやNa/KFlux法を用いて検討した。その結果,正常由来および病変由来の顎下腺導管上皮細胞では,これらの発現および上皮バリア機能で有意な差は認めなかった。さらに病変由来の導管上皮細胞では,各種サイトカイン処置に対して逆に発現増強やバリア機能の亢進が認められ,当初の仮説通りのデータが得られている。
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今後の研究の推進方策 |
通常の上皮細胞と異なる反応を示す唾液腺導管上皮細胞に対して,Th2やIFNγ処置,低酸素処置,線維芽細胞との共培養を行い,タイト結合関連分子の発現変化やバリア機能変化を検討する。さらにそのメカニズムに関して,細胞内シグナル伝達(PKCを始め,Src,p38,MEK,JNK,PKA)に着目し,ステロイドなどの薬剤,インヒビターやsiRNAを用いてタイト結合関連分子(claudins, occluding, ZO-1, JAM-A, tricellulin)のサイトカイン抵抗性を解析する。さらに線維化メカニズムを探るため,線維芽細胞自身へのautocrineまたはparacrine的なサイトカイン作用についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な物品が品薄のため,請求を次年度に行うこととしたため,次年度の計画に計上することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
培養関連試薬の購入に充てる予定である。
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