研究実績の概要 |
癌や外傷、炎症、先天奇形などにより気管の一部を切除しなければならない場合があり、気管を再生させるための技術開発が急務とされている。本研究の目的は、ヒトiPS細胞から気管を構成する軟骨細胞へ分化誘導し、ヒトiPS細胞由来気管軟骨細胞と生体適合性のある足場材料を組み合わせたハイブリッド型人工気管による気管再生技術の開発である。 平成28年度では、(1)コンディショナル発現システムを利用したヒトiPS細胞から軟骨細胞への分化誘導、(2)気管軟骨部分欠損モデルラットの作製、(3)ヒトiPS細胞由来気管軟骨細胞の移植、を実施した。 (1)コンディショナル発現システムを利用したヒトiPS細胞から軟骨細胞への分化誘導 成長因子と低分子化合物を組み合わせて沿軸中胚葉へ分化誘導し、その後、ドキシサイクリンを添加し軟骨細胞分化に関わる転写因子をコンディショナルに強制発現させることで、軟骨細胞へ分化誘導させることができた。 (2)気管軟骨部分欠損モデル動物の作製 全身麻酔下でヌードラットの気管を露出させ、電気メスを用いて気管軟骨部分欠損モデルラットを作製した。 (3)ヒトiPS細胞由来気管軟骨細胞の移植 ヒトiPS細胞から分化誘導した軟骨細胞と生体適合性のあるコラーゲンスポンジを組み合わせたハイブリット型人工気管を気管軟骨部分欠損モデルラットに移植した。移植1,2週後もラットの生存が確認され、今後、HE染色や免疫染色で組織評価を行う予定である。
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