研究課題/領域番号 |
26861408
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
高橋 秀聡 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50727196)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インターフェロン調節因子 / 頭頸部扁平上皮癌 / 遠隔転移 |
研究実績の概要 |
インターフェロン調節因子Interferon regulatory factor (IRF)ファミリーの中でも他癌腫で転移能への関連が指摘されているIRF1およびIRF6の機能解析を初めに行った。11種類の頭頸部扁平上皮癌細胞株を用いてWestern blotを行い、IRF1およびIRF6が高発現している2種類の細胞株を選んだ。これらの細胞株を用いてin vivoで肺転移モデルを作成すると肺転移形成率が0%であったため、IRF1およびIRF6は転移抑制因子として働いている可能性が示唆された。IRF1およびIRF6に特異的なsiRNAを用いてノックダウンした細胞株を作成し、Western blotで発現が低下していることを確認した。野生株とノックダウン細胞株を用いてWST-8 assayを行い、細胞増殖能を測定したところ、ノックダウン細胞株で細胞増殖能が亢進する傾向が認められた。しかし、Migration assayおよびInvasion assayで細胞株の遊走能、浸潤能を比較したところ両者に有意な差を認めなかった。IRF1およびIRF6は頭頸部扁平上皮癌においては細胞増殖に対して抑制的に作用している可能性が示された。また、転移能に関してはIRF1およびIRF6は直接の関連がない可能性も考えられたが、発現を抑制することで転移能は促進されないとしても、発現亢進によって転移能が抑制される可能性はあると考えられた。 他にIRF2およびIRF8についても頭頸部扁平上皮癌細胞株における発現検討を行った。IRF2高発現細胞株はIRF1の発現も高く、両者の発現に関連がある可能性が考えられた。また、IRF2およびIRF8高発現細胞株はin vivoでの転移形成能が低く、IRF2およびIRF8は転移抑制因子として作用している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスモデルを用いた肺転移モデルとIRFファミリータンパク質の発現を検討し、IRF1, 2, 6および8が肺転移を抑制する可能性が示されたものの、in vitroではそれを支持する結果が示されていない。また、臨床検体を用いた検討は、基礎研究が十分に進んでいないことから見合わせており、その点についても研究が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
IRF1, 2, 6および8は遠隔転移に対して抑制的に働いていると予想されるため、IRF低発現の頭頸部扁平上皮癌細胞株を用いてIRFを強制発現させることで転移が抑制されるかどうか検討する。まずin vitroでIRF強制発現細胞株と野生株の増殖能、遊走能、浸潤能を比較する。次にin vivoの肺転移モデルマウスを作成し、転移が抑制されるかどうかを検討する。さらに臨床検体を用いてIRFの発現を免疫組織化学的に分析し、生存期間、遠隔転移再発の有無などについて後ろ向きに解析を行う。さらにIRF遺伝子の下流の遺伝子の動向を解析するため、IRF強制発現細胞株と野生株の両者を用いてWhole gene microarrayを行い、IRFと関連する下流遺伝子の同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画の遅れのため、購入を予定した実験器具の購入を延期した。また、学会発表を行う予定であったが、これも行わなかったため、平成26年度分の旅費の支出を中止した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に行う予定の実験を平成27年度に行うため、その分の実験器具の購入に充当する。
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