研究実績の概要 |
頭頸部扁平上皮癌細胞株に対してcetuximabを作用させ、増殖阻害効果をもたない濃度においてwound healing assay, Boyden chamber assayを行いcetuximabが遊走あるいは浸潤抑制作用を持つことが示された。次に、xenograft modelを用いてin vivoにおいてもvitroと同様にcetuximabの投与によってリンパ節転移が抑制されることが示された。さらにその分子機構として、cetuximabによるEGFR-GEP100-Arf6-AMAP1 pathwayの抑制、EMTの抑制が関与していることが明らかになった(Matsumoto et al, Head and Neck, 2017)。 in vitroにおけるcetuximabの頭頸部癌細胞増殖抑制効果を調べるために、複数の頭頸部癌細胞株に対してcetuximabを投与し、WST assayを用いて細胞増殖抑制効果を調べた。EGFRのligandとして作用することが知られているAREG,EREGのmRNA、蛋白発現が頭頸部癌細胞株において認められることをreal time-RT PCR法とwestern blot法を用いて明らかにした。AREG, EREGを高発現している細胞株ではcetuximabによる細胞増殖抑制効果が有意ではないものの20~30%程度増強される傾向があることが示された。 この結果を受けて、頭頸部癌患者の初診時の生検で採取されたFFPE標本からAREG, EREGのmRNA発現レベルを治療後の予後と比較検討したところ、AREG, EREGの高発現群では有意に治療後の予後が延長していることが示された。頭頸部癌において、AREG, EREGは極めて有用な効果予測因子となる可能性が示唆される結果となった。
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