好酸球性副鼻腔炎の病因として、黄色ブドウ球菌が産生するスーパー抗原の関与の証拠が挙げられている。本来の生体には外的因子に対する防御因子によって細菌の排除機構が備わっており、黄色ブドウ球菌の定着が阻害されるが、好酸球性副鼻腔炎では黄色ブドウ球菌に対する排除機構が抑制・破綻されている可能性がある。そこで、好酸球性副鼻腔炎の増悪機序として、抗菌ペプチドによる防御因子の抑制に注目して鼻ポリープにおけるβ-デフェンシンとカテリシジンの機能解析を行った。鼻茸内の浸潤好酸球数100以上のものを好酸球性副鼻腔炎、100未満のものを非好酸球性副鼻腔炎と診断(臨床症状も考慮)する。コントロールとして正常の蝶形骨洞粘膜を使用して3タイプで比較検討を行った。また好酸球性副鼻腔炎患者より得た鼻ポリープ組織におけるβ-デフェンシンとカテリシジンの発現の程度を計測した。上皮組織から分泌される抗菌ペプチドの黄色ブドウ球菌の上皮細胞接着の抑制作用を実証し、好酸球性副鼻腔炎における抗菌ペプチドの防御因子としての役割を明らかにする。具体的には、①好酸球性副鼻腔炎とβ-デフェンシンとカテリシジン遺伝子と蛋白発現の関連、②好酸球炎症を惹起するサイトカイン、ケモカインによる粘膜上皮の抗菌ペプチドの応答性、③抗菌ペプチドによる黄色ブドウ球菌への上皮接着への影響を行う。外界からの黄色ブドウ球菌は鼻副鼻腔粘膜の表面上皮に接着し、内毒素に含まれるスーパー抗原の作用によって血中から好酸球を粘膜組織に動員させる。好酸球ならびに関連の各種サイトカインや活性化蛋白によって、上皮細胞や粘膜へ浸潤した炎症性細胞を刺激・活性化させ、抗菌ペプチドを分泌させる。抗菌ペプチドは表面上皮へ作用して黄色ブドウ球菌の上皮接着を抑制し、病態の悪化を抑えることが判明した。
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