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2014 年度 実施状況報告書

好酸球性副鼻腔炎から新規同定された真菌は炎症性サイトカインを分泌させる

研究課題

研究課題/領域番号 26861416
研究機関順天堂大学

研究代表者

廣津 幹夫  順天堂大学, 医学部, 助教 (10453581)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード好酸球性副鼻腔炎 / 鼻茸 / 内因性真菌 / DNA
研究実績の概要

慢性副鼻腔炎における起炎菌を知るため、慢性副鼻腔炎における洞内細菌に関して調査を行った。当科で手術を必要とした慢性副鼻腔炎の患者の副鼻腔より採取した内容物を培養して得られた細菌検査を集計・採取した鼻茸組織を顕鏡し、組織中の3視野における好酸球・好中球数の平均値から、明らかな好酸球性副鼻腔炎症例と好中球性副鼻腔炎症例を抽出して、培養検査の比較などを検討した。各症例から得られた好気性菌・嫌気性菌の検出率などを比較したが、有意差のある項目はなかった。どちらの症例においても、MSSAが比較的多く検出されたが検出率に有意差は見られなかった。また常在菌のみの検出率がどちらの症例においても30%以上認められ、抗生剤感受性に治療抵抗性を有する複数の常在菌が検出されていること、本来副鼻腔からは検出されにくいとされている常在菌が検出されていることなどから、常在菌が慢性副鼻腔炎の病態に関与している可能性が示唆された。さらにMSSAが比較的多く検出されたことや、黄色ブドウ球菌の外毒素と慢性副鼻腔炎(特に鼻茸を伴う好酸球性)の関与が示唆されていることから鼻茸形成に細菌感染が関与していると推察し、鼻茸組織における培養及びPCR解析を行ったが、細菌を検出する症例はなかった。一方、好酸球性副鼻腔炎症例及び鼻茸を伴う喘息を合併した慢性副鼻腔炎症例からPCR解析にて高率に真菌を検出する結果を得た。しかしながら、真菌DNAを検出した鼻茸組織をGrcott染色しても、真菌の菌体は確認することができなかった。鼻茸組織から検出した真菌DNAは、Candida parapsilosisやRhodotorulamucilaginosaなどの内在性真菌症となりうるものが主体であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

欧米において慢性副鼻腔炎は、鼻茸を伴い しばしば喘息を合併するTh2優位の慢性副鼻腔炎・鼻茸を伴わないTh1優位の慢性副鼻腔炎の2つに大別されており、好酸球性副鼻腔炎の病態に黄色ブドウ球菌の外毒素や真菌のⅠ型アレルギー・真菌の非IgE依存型アレルギーなどの微生物の関与が示唆されている。しかし、アジア人においては、非好酸球性副鼻腔炎でも鼻茸を伴う症例を認め、近年欧米人とアジア人の慢性副鼻腔炎における病態の違いが指摘されつつある。真菌に関しては、北米ではAlternaria・欧州ではCladosporiumの関与が示唆されており、地域差もあることが示唆される。欧米を中心にAlternaria,Cladosporiumなどの空気中に浮遊している真菌が、慢性副鼻腔炎(特に好酸球性副鼻腔炎)の増悪因子として関与するとされているが、その病態は未だ不明であり国内・国外で研究が行われている。今回の研究成果によって、好酸球性副鼻腔炎患者の末梢血上皮(特に好酸球)・気道粘膜などには、非好酸性副鼻腔炎患者や健常者のものに比して、プロテアーゼ活性レセプター(PAR)の発現が増強されており、鼻茸上皮をAlternaria,Cladosporiumなどの真菌抽出物で刺激すると、PAR-2/3が鼻茸上皮に発現して真菌由来の外因性protease(AspartateproteaseやPAR-2 cleavage)によって、Th2関連サイトカインなどが誘導されることがわかった。また、真菌壁に含まれるβ-D-glucan・mannnann・chitinが細胞上皮などに発現しているDectin-1に認識されたり、真菌DNAそのものがTLR2/4/9などに認識されると、NF-kBを活性化するといったことが推察された。

今後の研究の推進方策

これまでに検出した真菌のDNAの鼻茸組織内の局在を検証する。真菌DNAを検出した鼻茸と真菌DNAを検出しなかった鼻茸でのPAR-2mRNA/PAR-3mRNAの発現率・Dectin-1(CLEC7)cDNAの発現率を明らかにする。副鼻腔炎手術の際に採取した鼻茸(喘息合併症例と非喘息合併症例)から分離培養細胞を行い、研究代表者らが検出したCandida parapsilosisやRhodotorula mucilaginosaなどの真菌抽出物や真菌DNAを用いて刺激した際のサイトカインやケモカインを測定する。欧米では、好酸球性副鼻腔炎の病態にAlternaria/Cladosporiumといった真菌の関与が示唆されており、日本国内でもこれらの空気中に浮遊している外因性真菌についての検討がなされている。しかし、健康人においては病原性を示さない内因性真菌が慢性副鼻腔炎の発症に関与にしていることを実証する。喘息などの病態下において、真菌由来の外因性proteaseによって活性化されるPAR2・真菌細胞壁に含まれるβ-D-glucanなどの糖鎖を認識するDectin-1・真菌DNAを認識するTLR2/4/9などが非喘息合併例や健康人に比して、気道上皮に過剰発現している。アレルゲンとしての内因性真菌や内因性真菌のDNAが作用することによってTh2関連サイトカインやTh17関連サイトカインの誘導を促すといった病態を証明する。内因性真菌が惹起する炎症のメカニズムを解明すること、またPAR2/3・Dectin-1・TLR2/4/9などの真菌に関与するレセプターの意義を把握することに努め、慢性副鼻腔炎の増悪因子としての真菌に着目した治療戦略のヒントを得る。

次年度使用額が生じた理由

予定していた学会への出席の予定が合わず断念したため。

次年度使用額の使用計画

学会出張において積極的に成果発表を行うため、スケジュールの再調整を行い、残額は消耗品等の購入により支出することで更なる成果を得る。

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公開日: 2016-06-01  

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