研究課題/領域番号 |
26861417
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
小野 倫嗣 順天堂大学, 医学部, 助教 (10433773)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 好酸球性副鼻腔炎 / 鼻茸 / 抗活性酸素因子 / Superoxide dismutase / 好酸球 / マクロファージ / リモデリング |
研究実績の概要 |
各々の副鼻腔炎患者の鼻ポリープおよびコントロール群として下垂体手術時に採取した正常の蝶形骨洞粘膜組織を検体として用いる。なお、検体摘出の際に組織損傷がないように注意する。検体の保存に関して、固定の時間の調節や抗体の濃度希釈に注意する必要がある。手術時に採取された検体は、直ちに-80℃のフリーザーに保存。手術時に採取された検体は、直ちに-80℃のフリーザーに保存。鼻茸組織は一定量の5mm角に刻んで、組織を超遠心機にてホモジナイズした上清を測定試料とした。同時に、蛋白定量も行った。各ウェルにサンプル溶液を入れていき、順序希釈していく。プレートリーダーで450nmの吸光度を測定して、SOD活性を測定した。活性はすぐに酵素分解が進行するので、なるべく新鮮な組織を使用した。ホルマリン固定-パラフィン包埋処理、パラフィン切片の作成を行う。切片は3.5μmとした。H.E染色で400倍視野で平均3視野好酸球数カウント、好酸球数100以上のものを好酸球性副鼻腔炎、100未満のものを非好酸球性副鼻腔炎と診断(臨床症状も考慮)した。コントロールとして正常の蝶形骨洞粘膜を使用して3タイプで比較検証を行った。またリモデリングの程度として、鼻茸上皮の上皮障害率も測定した。脱パラを行い洗浄。Autoclaveが必要な抗体は121℃ 10minの条件で行った。1次抗体としてNeutrophil elastase x100、CD68(マクロファージ) x3, autoclave 121℃ 10min、対象としてnegative contorolも作成した。酵素抗体法によりDAB(LSAB法)で発色させた。必要に応じて、適宜抗体の希釈率などを変更し、適正な濃度で行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性副鼻腔炎・鼻茸は耳鼻咽喉科の日常診療において頻繁に遭遇する疾患で,鼻閉,鼻漏,嗅覚障害などの原因となり患者の生活の質を低下させる。従来の慢性副鼻腔炎の大部分は,細菌感染による急性炎症の反復と持続を契機として発症する化膿性副鼻腔炎であったが,近年これとは異なる機序,すなわち何らかの形でアレルギーや好酸球性炎症が発症に関与する新たな副鼻腔炎の病型が増加してきている。One airway, one diseaseの観点より、気管支喘息と慢性副鼻腔炎は病態が類似しており、上気道と下気道は密接な関係があると考えられている。気管支喘息において、気道粘膜の上皮障害やリモデリングは、気道粘膜に集簇した好酸球、マクロファージなどの炎症細胞から放出される、活性酸素の増減の関与が示唆されている。そこで、生体内のフリーラジカルを抑制する抗酸化酵素のSuperoxide dismutase(SOD)、Heme Oxygenase-1(HO-1)、Glutathione peroxidase、Catalaseなどが病態に関与している。喘息合併の難治性副鼻腔炎の1つである好酸球性副鼻腔炎が注目されている。今回の結果は、①IL-17A陽性浸潤細胞が多量に喘息合併慢性副鼻腔炎に存在すること、②IL-17A陽性細胞は鼻茸上皮剥離、基底膜肥厚のリモデリングや重症度と相関すること(Saito T et, al:Int Arch Allergy Immunol 151;8-16, 2010)。好酸球性副鼻腔炎鼻茸を用いて、組織内好酸球浸潤と抗酸化物の1つであるHeme Oxygenase-1(HO-1)、マクロファージとの関連性がある(Kawano K et al:Auris Nasus Larynx 39,387-392, 2012)。難治性かつ再発性の好酸球性副鼻腔炎の防御因子の作用機序が解明された。
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今後の研究の推進方策 |
難治性の好酸球性副鼻腔炎の病態が、喘息の病態と類似している事に着目して、好酸球、好中球、マクロファージの浸潤の程度、また活性酸素の防御因子(抗酸化酵素)であるSuperperoxide Dismutase (SOD)について解析する。また、SODにはsubtypeがあり、気道上皮では特有の局在を呈するので、subtypeについても同様に検証する。 活性酸素との関連における、鼻茸組織中の抗酸化酵素のSOD活性について検証する。活性は非常に不安定なため、組織の保存法、従来の活性測定法を改良していく。鼻茸組織中の炎症細胞浸潤の程度を解析するため、免疫染色法を改良し、適切な染色条件を検証する。また、SODが上皮系に局在するため、鼻茸組織中の上皮障害との関連・リモデリングについて検証する。さらに、組織中の好酸球との関連についても検証する。 鼻茸組織をLaser microdissectionにより鼻茸上皮を採取して、RT-PCRにより鼻茸上皮のSODのmRNA発現を検証する。鼻茸上皮から抽出できるRNAは非常に微量で単位時間で分解が進行するため、効率よくRNA抽出する方法を改良していく。好酸球性副鼻腔炎は高度の嗅覚障害、鼻閉、膠状の粘稠な鼻汁を呈し、喘息合併頻度が高く、著しくQOLを低下させる治療抵抗性の難治性副鼻腔炎である。その多くが、薬剤治療抵抗性であり、手術治療となるケースが多い。しかし、術後経過不良で再発するケースも多く、同時に喘息の悪化も伴う。本研究は好酸球性副鼻腔炎の分子病態・機序を解明する突破口を開き、根本的治療の現実化に正面から取り組むものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会への出席の予定が合わず断念したため。
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次年度使用額の使用計画 |
学会出張において積極的に成果発表を行うため、スケジュールの再調整を行い、残額は消耗品等の購入により支出することで更なる成果を得る。
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