研究課題/領域番号 |
26861423
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
関根 久遠 日本医科大学, 医学部, 助教 (20566377)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | cochlin / COCH / mRNA |
研究実績の概要 |
未だ解明されていない内耳性難聴の発症機序についての解析の端緒とするため、本研究では内耳に多く発現しているcochlinタンパク質に着目し解析を進めることにした。遺伝子の変異によりcochlinは、内耳組織で凝集・蓄積し遺伝性内耳性難聴の原因となることが判明している。本研究では変異cochlinの発現抑制を試みることで、将来的には治療法を開発することを大目標としている。本年度は、その第一歩として、cochlinのcDNAクローニングと培養細胞を用いたin vivo発現系の構築を行った。 これまでの研究で、ラットcochlinはalternative splicingにより2種類のcochlin mRNA isoformが発現していることが分かっている。ヒト内耳においても同様の発現が見られるかどうか調べるため5’-, 3’-RACE PCR法によるmRNA解析を行った。ヒトcochlinでは、完全長のcDNAと考えられる分子(約2.0 Kbp)以外に2本のDNA fragment (500bp, 550bp)が検出されたので、クローニングし塩基配列を決定した。しかしこれらshort form mRNAは、ストップコドンのない不完全なORFをコードしており、PCRアーティファクトによる偽cDNAと考えられた。特に531-536番目の残基にはAATAAAというpoly-A付加シグナルのコンセンサス配列が含まれていることから、生体内で間違ってスプライシングされている分子をPCRで高感度に検出している可能性がある。この結果からは、ヒト内耳でのmRNA isoformの存在を否定できないが、ヒトでのcochlin発現抑制では完全長のmRNAを対象にsiRNA条件の検討が妥当と考えられ、今回得られた全長cDNAを使って培養細胞発現ベクターの構築を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト内耳検体では凍結した組織からのRNA抽出を行っているため、抽出したRNAの品質にばらつきがあり、cochlin cDNAクローニングが困難であった。このため、全体の計画としてはやや遅れが出たが、完全長のcDNAクローニングも終了し、培養細胞発現系の構築も整いつつあるので、ほぼ計画通りに推移している。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、クローニングしたcochlin cDNA発現ベクターを用いて、ヒト繊維芽細胞に導入しcochlin発現系の評価を行う。標識タグをつけた発現系や、遺伝性難聴に関与するとされる変異型cochlinの発現系の樹立を行う。発現系の評価については、cochlin抗体を用いてin vivoにおける挙動を調べる実験を計画している。これらの発現系の構築が完了した段階でsiRNAなどを用いた発現抑制研究に着手する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ヒト側頭骨の入手機会は限られているが、当初使用予定であったサンプルでは全長mRNAが得られなかったため、ヒトCOCHの全長cDNAの作成に想定より時間がかかり、培養細胞の購入等予定していた支出を行わなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
既にヒト側頭骨サンプルからのRNA抽出は完了しており、残額は次年度、培養細胞やベクターの購入や、論文の校正等に使用したい。
|