鼻副鼻腔炎は日常的に遭遇する疾患であり、感冒後やアレルギー性鼻炎の増悪により、症状を呈する場合がある。我々は抗菌薬にて治療することが多いが、中でもマクロライド系抗菌薬を頻用し、それにより改善する症例としない症例がある。以前から原因菌としてブドウ球菌に注目し、マクロライド系抗菌薬により耐性化した菌種の形態異常を起こし、これがもとなり副鼻腔炎の難治化を起こすことを報告してきた。近年難病指定になった副鼻腔炎に好酸球性副鼻腔炎が報告され、この病態の原因は様々であるが、一因にブドウ球菌の関与が指摘されている。この菌種の菌体成分によりアレルギー反応が起こり、鼻内炎症が繰り広げられると報告されている。 一方、耳鼻咽喉科外来で頻用されている局所療法にネブライザー療法(エアロゾル療法)がある。薬剤をエアロゾル粒子に変換し、経気道的に鼻・副鼻腔に薬剤を投与する。局所療法である。全身投与よりも高濃度の薬剤を局所に投与することができるので、抗菌効果や抗炎症効果が高いといわれている。その治療方法を用いることにより鼻副鼻腔内に存在する耐性ブドウ球菌を除菌することにより難治性副鼻腔炎の改善がみられるのではないかと考え、まず現状把握の目的で様々な施設でネブライザー療法に用いられている薬剤がどのようなものかを把握する目的で実態調査を行ったところ、マクロライド系は使われておらず、セフェム系ならびにアミノグリコシド系抗菌薬とステロイドを合剤にして投与していることが分かった。 今回の研究では時間的余裕がなかったが、この薬剤濃度などを検証することにより、難治性副鼻腔炎のブドウ球菌の関与を除菌することによりマクロライド耐性ブドウ球菌の影響を防ぐことができると考えられた。
|