研究課題
本課題では、下咽頭癌幹細胞マーカーであるCD271が、下咽頭がんに果たす機能の解明に取り組む。(1)機能性を検討する為、下咽頭癌細胞株BICR6へ野生型CD271(WT)、細胞内領域欠損型CD271(ΔC)発現ベクターを強制発現したところ、CD271WTでは造腫瘍能が顕著に上昇したのに対し、CD271ΔCでは造腫瘍能は減少した。このことから、CD271による造腫瘍能の制御には、細胞内のシグナルが重要であることが示唆された。(2)癌幹細胞の性質の一つに多分化能の維持がある。CD271WT発現細胞において、多分化マーカーであるNanog, Oct-4, Sox2のmRNA発現量を定量PCRで検討したところ、コントロールに比べて上昇していた。この結果から、CD271の発現が幹細胞性の維持に関わっている可能性が示唆された。(3)癌内部は酸化ストレスが強い状態にある。CD271が酸化ストレス抵抗性を持つかを調べるために過酸化水素による毒性試験を行った。この結果、CD271ΔC導入BICR6細胞ではCD271WT導入及びコントロール細胞に比べて有意に感受性が上昇していた。このことから、CD271の発現は癌細胞の生存に有利に働くことが示唆された。(4)下咽頭癌臨床検体において、CD271陽性細胞は浸潤に重要な酵素であるMMP1,MMP10を高発現している。この発現の制御がCD271によって行われているかを調査するため、CD271WTおよびΔC導入BICR6においてmRNAの発現を比較した。その結果、CD271WT強制発現細胞ではMMP1,10の発現が上昇し、逆にΔCにおいてはこれらのMMPsの発現は著しく減少した。この結果から、CD271は浸潤能の制御にも関わることが示唆された。以上のことから、CD271は頭頸部癌において下流シグナルにより癌の浸潤・造腫瘍能を制御する可能性が示唆される。
2: おおむね順調に進展している
計画に基づき、CD271細胞内ドメイン欠損型、変異型の発現細胞株を樹立し試験を行っている。NOGマウスにおける下咽頭癌ラインの樹立も順調である。
当初の計画通り進める。
超免疫マウスの解析に時間を要するため
抗体等消耗品試薬類及びマウス購入に充てる
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Cancer Science
巻: 105 ページ: 667-674
10.1111/cas.12406