緑内障の要因の一つとして、細胞外グルタミン酸濃度の過度な上昇による網膜変性が知られており、今回、グルタミン酸毒性を示す細胞死のモデルとして、ラット海馬由来神経細胞株(HT-22細胞)をin vitroのモデルとして用いた。また、動物モデルとして、NMDAの硝子体内投与による網膜神経節細胞変性モデルが広く利用されているが、急性の細胞毒性を示すことから、より緑内障モデルに近い動物モデルの作製を試みた。 HT-22細胞は添加したグルタミン酸濃度に依存し細胞死が誘発され、その半致死量は約1mMであった。そこでグルタミン酸濃度1mMに設定し、GluClの効果を検証したが、有意な保護効果は見られなかった。一方、対象として用いた、光照射でNaイオン透過性を示す当研究室で作製した改変型ボルボックス由来チャネルロドプシン-1(mVChR1)を導入したHT-22細胞では、グルタミン酸毒性が完全に抑制された。mVChR1の遺伝子導入による保護作用は、全く予想外の作用であり、その機序について今後検討していく予定である。一方、in vivo 緑内障モデルとして、デキサメタゾン誘発眼圧上昇モデルを検討した。すでに報告されているデキサメタゾン誘発眼圧上昇モデルは、前房内に毎日、投与する必要があり、多くの労力を有する。そこでデキサメタゾン投与と同時に細胞を前房内に投与し眼圧上昇を持続させることを試みた。この方法では、一回の投与で約4週間の眼圧上昇が認められた。4週間後に再度投与することによって、さらに4週間眼圧上昇が持続したが、8週間後の投与では更なる眼圧上昇は確認できなかった。今後、このモデルを用いて、mVChR1の神経節細胞保護効果について検証する予定である。
|