基礎研究分野においては分取した網膜神経節細胞をマイクロアレイ解析したところ、軸索障害7日後の網膜神経節細胞群は対照群(軸索障害を与えていない群)と比較し、HO-1は有意に高く発現していた。免疫染色において神経節細胞層に軸索挫滅1、4、7日後の網膜神経節細胞層にHO-1のシグナルを確認し、経過するにつれHO-1陽性細胞の割合が高くなった(Himori et al.J Neurosci Res. 2014)。 当院眼科外来では通院中の緑内障患者と対照群における血中酸化ストレス値と抗酸化力の両者をフリーラジカル分析装置で測定し、尿中の酸化ストレスマーカー(8-OHdG)、皮膚AGE値を測定したところ、コントロールと比較し緑内障患者の尿中8OHdGが有意に高値であった。また、尿中8OHdGと視神経乳頭血流が相関し、後期よりも初期緑内障においてより相関することが明らかになった。多変量解析においてMD値に対し尿中8OHdGは有意に寄与していることが明らかになった(Himori et al.Graefe's Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology. 2016)。緑内障の病態には視神経乳頭血流が関係していて、その血流と酸化ストレスマーカーである尿中8OHdGの相関があることから、尿中8OHdGが緑内障のバイオマーカーになる可能性があると考えられる。
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