平成28年度も前年度までのミエロイド細胞としてヒト単球細胞株であるTHP-1を用いin vitroによる研究の継続してきた。このモデルでは、はじめにTHP-1にPMA (Phorbol 12-myristate 13-acetate) 刺激を行い、ヒトマクロファージ細胞を誘導する。その上で眼内疾患および病態に類似した環境を作り出すためM1サイトカイン(IFN-γ)やM2サイトカイン(IL-4およびIL-13)、眼内主要サイトカインのプロスタグランジンE2 (PGE2)、さらに糖尿病合併症の病態形成の重要な要因と考えられる終末糖化産物 (AGEs)を培養上清中に負荷し、各種サイトカインやケモカイン産生能を中心に検討してきた。今年度は治療分子の検討を行うことを計画していた。具体的にはマウスレベルでマクロファージ由来の血管新生抑制の効果を過去に報告しているCD200Fcを治療分子の候補として負荷した。蛋白測定としてELISA法、遺伝子解析として定量的PCR法も試みた。前年度までの結果のとおりPGE2刺激ではTh2サイトカイン以上のVEGF産生亢進や、AGEsによってもVEGFの高い産生能が示され、さらにAGEsによる刺激では、IL-1βやIL-6 などの炎症性サイトカインだけでなくIL-8やRANTESなどのケモカインの産生も強く誘導される。今回、これに加えて新たにCD200Fcによる負荷を加え検討を行ったが、これまでのところ明確な抑制効果が確認できていない。しかしながら本分子に治療分子としての可能性は否定できないと考えられるため、今後条件の最適化などによる更なる検討が必要であると考えられた。
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