研究実績の概要 |
難治性視神経症である外傷性視神経症や虚血性視神経症は現在のところ著効する治療法は未だ確率されていない。当科では経角膜電気刺激治療(TES)といった新たな治療法をこれらの症例に対して行い、ある程度(疾患によっては40%)の症例で視機能が改善することを経験し、学会等にて報告した。しかし視機能改善は視力検査、視野検査といった自覚的検査での評価しかなく、他覚的かつ定量的に評価する方法を必要としていた。 本研究は、外傷性視神経症や虚血性視神経症などの難治性視神経疾患に対してTESの他覚的、定量的評価を瞳孔記録計RAPDxを用いて行うことを目的とした研究だが、昨年時と比較すると症例数は少し増えたので、2017年11月に第55回神経眼科学会総会にて発表した。対象は片眼発症の外傷性視神経症5例と虚血性視神経症9例。両群とも発症から3ヶ月以上経過後にTESを1ヶ月毎に計3回行った。治療前および治療終了から1ヶ月後にRAPDxのamplitude score(AS)とlatency score(LS)を測定した。治療前後の両群AS,LSについてt検定を用いて統計学的解析を行った。 結果は、経角膜電気刺激治療の治療効果としては残念ながら外傷性視神経症群、虚血性視神経症群のどちらの疾患でも統計学的な有意差は認められなかった。しかし症例毎で見ると、少数例ではあるがAS値に改善が見られたので、他覚的評価でもTESが効果的である可能性が示唆され、興味深い結果であると考えた。 科研費の研究期間は終了したが、今のところ特に外傷性視神経症例が少ないので今後も引き続き症例を増やして研究を続けていき、やがての論文報告を考えている。
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