糖尿病黄斑浮腫など糖尿病眼合併症の病態には、炎症など種々のサイトカインが重要な役割を果たしているが、これらの発現レベルを評価するには前房水や硝子体液を侵襲的に採取するしかなかった。申請者は、これらの患者涙液中で種々のサイトカインが上昇していることを見いだした。これは涙液に眼環境を反映するバイオマーカーとして利用可能なデータが多数含まれていることを示している。本研究では、非侵襲的に採取が可能な涙液を試料としてサイトカイン濃度を測定、モニタリングすることで、糖尿病眼合併症の病勢把握を試みた。 その結果、増殖糖尿病網膜症患者の涙液では、硝子体手術後にMMPの濃度が健常者と比較し有意に上昇することが明らかとなった。また術後の角膜上皮障害は糖尿病患者群でのみ観察され、それらの症例では角膜上皮障害がなかった症例と比較してMMP-10の値が有意に高値であった。これらのことから、術後の涙液中MMP-10値が高いことが、硝子体手術後の角膜上皮障害に関連していることが示唆された。
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