研究課題
本研究では,片眼性加齢黄斑変性の僚眼発症の危険因子を遺伝的および生活習慣などの環境的要因を調査することにより明らかにすることである。平成26年度は,まず加齢黄斑変性の一亜型であるポリープ状脈絡膜血管症(PCV)患者に関して検討を行った。対象は,2年以上経過観察のできた179名の片眼性PCV患者で,全ての患者に対して,加齢黄斑変性の感受性遺伝子であるCFHI62V多型(rs800292)及びARMS2A69S多型(rs10490924)の遺伝子型をTaqMan法にて決定した。期間中僚眼に発症を来した症例は20名で,発症しなかった症例159名と比較したところ,CFH遺伝子多型では両群間で有意差を認めなかったが,ARMS2遺伝子多型では,僚眼に発症を来した群で,有意にARMS2遺伝子のリスク塩基が高かった。また,僚眼発症までの期間は,有意にリスク塩基をホモ(2つ)で持つ群が,早期に発症する傾向が認められた。ARMS2のリスク塩基をホモで持つ群の半数は,15年以内に僚眼に発症を来すと推定された。また,Cox生命分析では,ARMS2遺伝子多型のリスク塩基のみが,有意に僚眼発症の危険因子であることが明らかとなり,そのHazard ratioは2.5であった。本研究では,加齢黄斑変性の発症危険因子の最大の要因である喫煙歴に関しても検討をおこなったが,非喫煙者と喫煙者では,有意な差は認められず,両眼発症患者は片眼発症患者と比較して,環境要因よりも遺伝的要因が強く関与することが推定された。
2: おおむね順調に進展している
研究1年目に上記解析を行い,結果が得られ,英文論文を投稿受理された。
平成26年の結果よりARMS2遺伝子が強く僚眼発症に強く関与していることが確認できたので,今後は他の加齢黄斑変性感受性遺伝子と併せ,また症例数を増やして検討を行う予定である。また僚眼に,reticular pseudodrusenを持つ症例は,両眼発症を来しやすいことが報告されており,このreticular pseudodrusenを片眼に持つ症例と持たない症例の僚眼発症率の解析を行い,また遺伝的な差異があるかどうかも検討する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 2件) 備考 (1件)
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http://www.med.yamanashi.ac.jp/clinical/ophthal/