加齢黄斑変性は、高齢化社会の進行に伴い、先進国においてその数は増加の一途をたどっている。加齢黄斑変性患者は、片眼発症患者が多いため、もし治療が奏功しなかった場合でも、他眼である健常眼で生活することが可能であるが、もし両眼発症を来たし、その発見が遅れた場合もしくは治療が奏功しなかった場合には、患者のquality of lifeは著しく損なわれ、患者が高齢であることもあり、生活全般の介助や看護が必要となり、患者家族や社会の負担も増加することが予想され、社会的損失は大きいと考えられる。 今回の研究では、179例の片眼性加齢黄斑変性で受診された患者を長期にわたり(最大経過観察期間180か月)経過観察を行い、健常眼が加齢黄斑変性を発症する頻度やその危険因子に関して検討を行った。経過観察期間中20名(11%)の患者の健常眼に、加齢黄斑変性が発症した。発症者と非発症者を比較すると、加齢黄斑変性の感受性遺伝子であるARMS2 A69S遺伝子多型(rs10490924)のリスク塩基が有意に高く、またARMS2 A69Sのハイリスクgenotypeである患者は、他のgenotypeよりも有意に早く健常眼発症することがわかり、また約10年間の経過観察中に半数の症例が健常眼に加齢黄斑変性を発症することが判明した。 この結果よりARMS2 A69S遺伝子多型は、有意に片眼発症加齢黄斑変性の健常眼発症に関連し、またARMS2 A69Sのハイリスクgenotypeを同定し、綿密な経過観察を行うことは非常に重要であると考えられた。
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