研究課題
中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)は、代表的中途失明原因のひとつである加齢黄斑変性(AMD)を続発しうるが、その原因は明らかになっていない。全ゲノム領域を対象とした関連解析(GWAS)や、脈絡膜の厚みを光干渉断層計により非侵襲的に定量してこれを量的形質とした量的形質遺伝子座解析(QTL解析)といったゲノム学的研究手技を行うことで、CSCやAMDとの関連が示唆されている脈絡膜厚の個人差に関与する遺伝子・分子を明らかにしうると考え、本研究を行った。我々の施設で同意を得て末梢血採取を行ったCSC症例の中から、250例のDNAを用いて、全ゲノム領域の多数の一塩基多型(SNP)の遺伝子型決定を行った。その結果を症例群とし、取得済の一般健常人全ゲノム領域SNP遺伝子型情報を対照群として、全ゲノム領域の各SNPについて症例対照関連解析を行った。その結果、複数の遺伝子領域がCSC発症と関連する可能性が示唆されたが、CSCのDNAサンプルを有する別の2施設で同様の検討を行ったところ、結果の再現性は確認されなかった。並行して、全ゲノム領域SNP遺伝子型情報を取得済みのAMD症例745人について、光干渉断層計画像を用いた黄斑部脈絡膜厚の定量を終了し、これを用いた全ゲノム領域QTL解析を行った。この結果、既報でAMD発症と非常に強い関連が示されているARMS2遺伝子領域が、AMD症例の脈絡膜厚の個人差とも関連する可能性が示された。このため、AMD症例を脈絡膜の厚い群と薄い群の2群に分け、この2群間でARMS2遺伝子多型の頻度を検討した結果、脈絡膜が厚いAMD群では、この遺伝子頻度が正常群に近くかつ典型的AMDに多く認めるドルーゼンの頻度が少ないことが示された。CSCでも脈絡膜が厚いことから、CSCから続発する脈絡膜が厚いAMD症例(pachychoroid neovasculopathy)では、典型的なAMDとは異なる発症メカニズムが関与している可能性が示され、これを報告した。
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日本眼科学会雑誌
巻: 120 ページ: 163-189
Sci Rep
巻: 5 ページ: 16204
10.1038/srep16204