研究実績の概要 |
培養口腔粘膜上皮細胞シート移植後に全層もしくは表層角膜移植を施行した4例の患者において、摘出角膜組織を対象として、培養移植後の角膜上皮や実質の組織について、HE染色、免疫染色、電子顕微鏡(TEM)で検討を行った。 HE染色ではすべての症例においても上皮層は重層化しており、基底部には幹細胞様の小型の細胞を認めた。重層度合いにはばらつきがあり、3例において2層~4層程度であったが、1例においては10層以上の重層化が見られており、口腔粘膜組織に類似していた。この症例は実質混濁が著明であり、異常実質が上皮細胞のフェノタイプに影響を与えた可能性が考えられた。 免疫染色の評価では、4例全例においてp63, K3/76, K4, K13陽性細胞を認めた。さらにMUC16が3例で、ZO-1, K12が1例で陽性であった。K15,p75は全例において陰性であった。 電子顕微鏡を用いた評価では上皮細胞は正常の携帯をしており、lamina densaやlamina lucidaと考えられる構造が確認された。タイトジャンクションやアドへランスジャンクション、デスモソームも確認された。 これらの結果から、培養口腔粘膜上皮細胞は角膜に移植後1年以上経過しても基底部にはp63陽性の幹細胞を含み、K3/76およびK4,K13陽性であることから、シート移植前のphenotypeを維持していることが示唆された。また1例において、角膜上皮特異的ケラチンであるK12が陽性であり、角膜上で周辺環境による影響を受けて角膜上皮化成したと考えられた。3例においてはMUC16陽性であることから、角膜上皮様に変化していることが確認された。
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