研究課題
平成26年度はcAMPの病的血管新生への関与につき高酸素誘発網膜症(OIR)モデルを用いて調べた。cAMPを基質とする排出型トランスポーターであるMultidrug resistance protein 4 (Mrp4)ノックアウトマウス(KO)を用いてOIRモデルを作成し、MRP4が病的網膜血管新生に対して抑制的に働いていることが示された。平成27年度は培養ヒト網膜血管内皮細胞(HREC)を用いたin vitro実験において、細胞内cAMPの誘導物質であるフォルスコリン(FSK)刺激によりHRECにおけるSIRT1の発現増加が確認された。また加齢におけるcAMPの役割を検討するため、生後約10週のMrp4Koマウスを用いたin vivo実験を行い、Mrp4KOマウスでは網膜細胞体の菲薄化を認めないという結果を得た。cAMP-Mrp4(-Sirt1)の経路が加齢におよぼす変化と病的網膜血管新生への保護的な作用は相反するようにも考えられた。そのため本年度は病的な状態からの生理的な血管形成についての検討を行った。Mrp4KOマウス及びコントロールマウス(野生型)に対してOIR負荷を行い、生後28日時点での網膜血管構造変化について解析を行った。野生型の網膜展開標本では、OIRモデルで生後17日目に確認された血管異常は改善され、通常の網膜血管構造を認めた。一方、Mrp4KOマウスにおいては、病的新生血管の退縮を認めたが網膜展開標本の後極側における血管構造の回復遅延が示唆された。さらに数を増やす必要があるが、生理的な血管形成についてMRP4が促進的な作用を有する可能性が推測された。また以前に我々はcAMP負荷によりMrp4KOマウスではペリサイトが脱落することを報告しており、本研究についてもペリサイトの評価を合わせて行う予定である。以上の結果をもって論文投稿予定としている。
すべて 2017
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Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol
巻: 255 ページ: 541,548
10.1007/s00417-016-3500-1
10.1159/000455273
巻: 237 ページ: 123,127
10.1159/000455273.