研究課題
H28年度は種々の疫学研究や臨床研究も同時に行った。疫学研究では、Nagahama Studyに関与し、約1万人の回旋偏位をカラー眼底写真から計測した。回旋偏位が大きくなると、前後方向の傾き知覚であるslant感覚の異常が生じることが推定される。端的に言うと、外方回旋偏位が大きくなると、鉛直な線でも上端が手前に傾いて見える。今回の研究結果から加齢により外方回旋偏位が大きくなること等が分かってきた。現在英文雑誌に投稿中である。また臨床研究では、斜視や視力低下の原因となり得る、網膜色素変性(RP)に代表される網膜変性疾患を専門外来で見る機会が増えたため、これを研究した。健常人で斜視が出現せず正位を保てるのは周辺視野の融像が特に重要だと考えている。失明すると両眼視ができず年々斜視が増悪する(感覚性斜視)。変性疾患の中でも重篤な疾患であるBietti crystalline dystrophy(BCD)の網膜色素上皮や脈絡膜を調べた。BCDは欧米人と比較して日本人に多く、CYP4V2遺伝子の異常による常染色体劣性遺伝の病気であるが、この遺伝子は網膜色素上皮や脈絡膜に発現している。網膜の視細胞に障害が出るRPとはその点で少し異なる。網膜色素上皮や脈絡膜はBCDで健常者やRPよりかなり薄く、異なるパターンを示すことを証明した(Retina in press)。さらに、強度近視でも内斜視や上下回旋斜視が出現するが、myopic CNVが無侵襲のOCT angiography単独で94.1%も検出されることも示した(Am J Ophthalmol 2016;165:108-14)。
3: やや遅れている
現在勤務している施設は研究設備が整っており、優秀な研究者が集まっているため、彼らと共同で最先端の研究を行うことで、研究の幅が拡がり、多方面の研究を行えるようになったため。
ひきつづき斜視に関連する多方面の研究を行い、多角的に斜視患者における感覚面を調べていく。
今年は物品購入が無く使用額が少なくなった。
印刷中の英文雑誌の掲載料などが必要となることが想定されるので、こちらに回す予定である。
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