研究課題
前年度から引き続き、Nagahama Studyで約1万人の他覚的外方回旋偏位の分布を調べたところ、興味深い知見を得た。まず、高齢者ほど外方回旋が大きくなっていた(P<0.001)。これは加齢により外眼筋支持組織が脆弱化し、最も弱いとされている外直筋と上直筋を結ぶバンドが緩んだり、破綻することで上直筋と外直筋の間が開大することが原因と考察した。さらに、60代以上では有意な性差を認めた(P<0.001)。女性の方が外方回旋が大きく、60代より70代でさらにその差は広がった。外眼筋支持組織はコラーゲンを含んでおり、その安定には性ホルモンが関与している。女性は閉経により著明な女性ホルモンの低下が生じ、その影響が60代以降で現れたためと考えた。これをまとめた論文はActa Ophthalにアクセプトされた。後向きに外方回旋偏位の主原因である上斜筋麻痺に対する下直筋後転術の手術効果を調べた。下直筋はその性質上手術効果が不安定であるため、敬遠されがちな術式である。しかし、正面位と下方視のの斜視角の差が手術効果に相関しており(P=0.004、r=-0.61)、術前にこの因子を考慮することで手術効果が安定する可能性について言及した。この論文はGraefes Arch for Clin Exp Ophthalmolにアクセプトされた。斜視を誘発する網膜色素変性において斜視角を測定したところ、健常者よりかなり高率に斜視が存在することがわかった。また、斜視角と残存視野との間に負の相関関係があることもわかった。現在英文雑誌に投稿中である。また網膜変性疾患の1種であるBietti crystalline dystrophyにおける脈絡毛細管板をOCT angiographyで調べ、ここに血流がないと視力が悪いことが分かった。この論文はBr J Ophthalmolにアクセプトされた。
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