研究課題
本研究の目的は糖尿病網膜症、特にこれまで明らかとなっていない網膜血管透適性亢進メカニズムヘのRho kinase (ROCK)の関与を解明し、”網膜血管透過性をターゲットとしたROCK阻害剤の病態制御”の可能性を模索することです。本年の研究では、ROCK阻害剤は高血糖刺激や糖尿病網膜症患者血清、Rho activatorリゾホスファチジン(lysophosphat idic acid)刺激によるROCK活性化を抑制し、これらの刺激によって生じる閉鎖帯におけるtight junction関連蛋白(claudin-5)の崩壊を抑制することが分かった。In vivoでは、ROCK阻害剤によるVEGFを網膜で高発現する遺伝子組み換えマウス(Kimbaマウス)による網膜血管透過性亢進およびるtight junction関連蛋白(claudin-5)の崩壊を抑制する傾向はあるようだが、個体間でのバラツキが大きく、有意な変化は認められなかった。糖尿病網膜症と同様な無灌流領域や網膜新生血管などの増殖性変化を発症するAkimbaマウスを作成するために、自然発生糖尿病モデルマウス(Akitaマウス)とVEGF高発現マウス(Kimbaマウス)との交配を続けたが、生後まもなくして死亡してしまうために、実験可能な個体数を確保することができなかった。Vivoの実験系では、個体間のバラツキがないことが前提ではあるが、このモデルマウスでは個体間のバラツキが強く、飼育も困難であったことから期待していた結果は得られなかった。しかし、Vitroの実験系においてはROCK阻害剤が糖尿病網膜症に関する種々の刺激によるclaudin-5の崩壊を抑制することが確認できており、糖尿病網膜症における血管透過性制御に重要な閉鎖帯におけるclaudin-5維持を可能にすることができることが分かった。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Invest Ophthalmol Vis Sci
巻: 57 ページ: 2264-2276
10.1167/iovs.15-17411.