研究実績の概要 |
網膜剥離は放置すると、失明する危険のある重篤な疾患であり、我々は病態形成の解明や組織保護の可能性について研究を進めている。平成26年度は極性培養網膜色素上皮細胞(polarized RPE)を用いin vitroで検討した。RPEは網膜剥離の際に網膜下液の形成や吸収に重要である。我々のpolarized RPEのTransepithelial electrical resistance (TER)は十分上昇しており、形態も6角形状でより体内に近い状態での検討が可能であると思われる。網膜剥離の際にはSDF-1以外にも種々の因子が病態を形成しているが、血液の凝固因子の一つであるThrombinに注目し、polarized RPEに対する影響を検討した。網膜剥離の際の網膜下液にはThrombinの濃度が高いことが報告されている。Thrombinに暴露されたpolarized RPEはTERの変化を起こさないが、non-polarized RPEではTERが低下し、バリア機能が低下することが示唆された。細胞の増殖を示すKi-67陽性の細胞もnon-polarized RPEのみ増加していた。これらの結果から細胞は極性を持っている場合と持っていない場合で異なる反応を示すことが示唆された。(Terasaki, Otsuka, et al. Curr Eye Res. 2014) 研究の進展は概ね順調であり、来年度は得られた知見をもとにその他の因子についても解析を進める予定である。
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