研究課題
網膜剥離は失明につながる恐れのある重篤な疾患である。手術に多くの症例で網膜復位を得られるようになっているものの、細胞死による視機能低下が避けられない症例もある。近年transwellを利用した網膜色素上皮細胞 (RPE)培養により、細胞極性を持ったPRE (polarized RPE)培養が可能になっている。我々はpolarized RPEを用いて生体により近い環境でRPEとthrombinの病態への関わりについて検討した。RPE培養では細胞を播種して3日目でTERは179.3 ± 4.8 Ω・㎝2、形態も敷石状であったが、14日目には345.5 ± 10.4 Ω・㎝2に達し、6角形の成熟した形態を認めた。そのため3日目の細胞をnon-polarized RPE、14日目の細胞をpolarized RPEとして実験を行った。その結果thrombin刺激によりnon-polarized RPEではTERが低下し、tight junction蛋白質の減少を認めた。non-polarized RPEではKi-67陽性細胞を認めたが、polarized RPEでは認めなかった。permeability assayではthrombin刺激によりnon-polarized RPEのみ透過性の亢進を認めた。これらの結果から正常なRPEは影響を受けにくいが、長期に経過した網膜剥離や加齢黄斑変性などでRPEが極性を失うと、出血やそれに伴うthrombinの影響を受けやすい可能性が示唆された. 今後SDF-1などの他の因子についても検討する予定である.
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