我々は、膠様滴状角膜ジストロフィ(GDLD)の責任遺伝子であるTACSTD2は、CLDN1およびCLDN 7と直接結合し、角膜上皮におけるタイトジャンクション(TJ)の形成にとって必須の分子であることを示してきた。GDLDと類似した臨床像を示す二次性角膜アミロイドーシスの角膜においては、TACSTD2、CLDN1、CLDN7のいずれも発現しており、角膜へのアミロイド沈着のメカニズムが、GDLDと異なる可能性がある。 またGDLD患者から樹立した不死化角膜および結膜上皮細胞を用いたTJ関連の解析の結果、両細胞とも著明にCLDN1、CLDN7の発現が低下していた。また、細胞境界にTJP1、occludinの発現を認めるものの、GDLD患者由来の角膜、結膜上皮細胞のいずれも著明にバリア機能が低下していた。 タンパク質リン酸化酵素であるProtein kinase C(PKC)は、細胞内における様々なシグナル伝達に関与しており、TJの制御に関係がある。GDLD患者由来の不死化角膜および結膜上皮細胞、また正常不死化角膜および結膜上皮細胞を用いて、PKC-αのmRNAレベルとタンパク発現レベルを検討したところ、角膜、結膜ともに、GDLD患者由来の細胞では正常由来の細胞と比べると、PKC-αの発現が上昇していた。また、GDLD患者由来のwild typeのTACSTD2遺伝子を導入すると、CLDN1、CLDN7の発現が回復するとともに、PKC-αの発現が低下し、PKC-αがCLDN1、CLDN7の発現制御に関わっている可能性が示唆された。さらに、PKC-α阻害剤処理により、GDLD細胞でのPKC-αの発現レベルが低下し、CLDN1の発現がわずかに回復した。以上の結果から、GDLDの病態においてPKC-αの関与が示され、PKC-α阻害剤がGDLDの治療薬の候補となる可能性が示唆された。
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