研究実績の概要 |
加齢黄斑変性(AMD)は今なお視力予後の不良な疾患である。本疾患の予後を左右する因子として網膜色素上皮(RPE)を含む後眼部間質における線維化が挙げられる。この進行性病態の首座をRPEにおける細胞老化-上皮間葉系移行(EMT)-線維化という「細胞の機能的相転移」として捉え、新しい治療概念を創出する。まずRPE線維化in vitroモデルとして霊長類RPE初代培養、ヒトRPE細胞株を、線維化誘導物質としてTGFβ、TNFαを用いた。その結果RPEの機能関連タンパクであるZO-1, Na+K+-ATPase, RPE65の発現減少、αSMA, fibronectin, collagen, phalloidinなどの線維化関連タンパクの発現増加を認め、線維化in vitroモデルが作成できた。さらに予備的検討においてスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)やさらに強力なHDAC阻害薬であるOBP-801を阻害薬として用いたところ線維性変化の抑制が認められた。次に「相転移」制御において遺伝子発現、miRNAによる遺伝子機能制御レベルで網羅的に解析を行った。その結果TGFβ添加によりコントロールと比較してANGPTL4など4倍以上の増加、FGF18などの1/4以下の減少が認められ、TNFα添加ではIL-8など8倍以上の増加、BMP6など1/4以下の減少が認められた。またmiRNAにおいてはmiR4460, miR4754などのup regulate、miR651-3p, miR4716-5pのdown regulationが検出された。以上からRPEへの細胞ストレスなどで惹起される細胞相転移においてEMT抑制、MET促進、細胞の分化促進、p27抑制、細胞周期促進、枯死抑制など遺伝子発現を制御するmiRNAが選択的にup/down regulateされている事が示唆された。
|